カミングアウトと運命
「僕は、後藤夏樹だ。」
その言葉で私は目を見開いた。
後藤夏樹って言ったら、私の彼氏。
彼氏がここに居る。
なんで?
彼は、夏樹くんは、別の学校にいる。
そうじゃないの?
「な、なんで、ここにいるの……?」
「なんでって、転校してきたからじゃん。」
おかしい。夏樹くんは家の事情がない限り転校なんてする人じゃない。
「なんで転校してきたの!受験した学校で最後まで居ればよかったじゃない!」
少し怒りがこもった。
「なんでって会いたかったからじゃん。あの高校は親に行け行け言われてうるさかったから。あそこ受験しなかったら『彼女と無理やり別れさせる』って言って聞かなかったから。」
夏樹くんは冷静に話す。
だけど対処的に私は全然冷静ではない。
「なんでそんなに冷静に言えるわけ?私が寂しかったの知ってるでしょ!」
震える声。
でも夏樹くんはそのまま話を続ける。
「でも、親にめっちゃお願いしたんだよ。どうしても会いたいから転校したいって。」
「そしたら『お前ってことを気づかれない自身があるならいいよ』って言われて。うちの親ってカレカノ関係についてめっちゃ厳しくてさ。意味わからんわけ。」
「でも、今ここでカミングアウトしたってわけ。」
……は?
なんでそんなに私が大切にされてるの?
メールだって返事してくれなかったじゃん。
気づかれないようにって。私、全然気づけなかった。
もう、そんなことなんてどうでもいい。
ありがとね。
私の目から涙がこぼれる。
悲しさの涙じゃなくて嬉しさの涙。
私は夏樹くんの体に抱きついた。
夏樹くんに驚かれる。
そりゃあそうか。自分から抱きついた事なんて1度もないから。
あの時の約束、守れたかな。
「ありがとね」
心の中で言った言葉を口に出して復唱する。
涙混じりの声で私は呟いた。
「俺も見捨てられなくてよかった。琴菜、ありがとうな。」
小指に巻き付いてそのままちぎれてしまっていた糸が修復されていくように私達の関係も修復されていくようだった。
窓から見える景色はいつもと違って見えた。
今、運命の赤い糸が見えた気がした。
離れた貴方と離れなかった。 いながわ みさ @me-ness_
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