Bパート
犯人は藤田刑事と撃ち合っている。私たちが包囲したことは気付かれていない。うまくいきそうだ。
(行くわよ! 1,2,3!)
私は草むらから飛び出して犯人たちの方に走った。
「銃を捨てなさい! そうしないと撃ちます!」
私は声を上げて空に向けて「パーン!」と威嚇射撃をした。すると2人の男は慌てふためいていた。だがその内の一人が私に向けてライフル銃を狙いもせずにぶっ放してきた。私はあわてて身を伏せた。幸い、弾はそれて私には当たらなかった。だがその間に2人が逃げていった。
「待ちなさい!」
私は男たちに向けて発砲した。すると銃を持っていない方の男の左大腿に命中した。
「いてぇ!」
その男はもっていたバッグを放り出して転んだ。血が流れる左大腿を押さえている。
「藤田さん! あとをお願いします!」
私は走ってくる藤田刑事にそう声をかけて、ライフル銃を持った男を追った。その男が小泉だろう。優れた射撃の腕を持つという。逃げていく方には30半ばの警官が待ち構えているはずだ。
(きっと足止めしてくれる)
私はそう期待した。だが一抹の不安があった。彼は拳銃を撃てないかもしれない・・・。
小泉はライフル銃を抱えて走って逃げていた。だが急に足を止めた。彼の前に拳銃を構えた警官がいたからだ。
(ここで撃てば逮捕できる!)
私はそう思った。だがその警官は拳銃を撃たず、すぐにその筒先を下げた。やはり撃てないようだ。私の不安は的中してしまった。
「犯人よ! 撃って!」
私は叫んだがその警官は苦悩した顔をしてじっとしたままだ。小泉はニヤリと笑って向きを変えてまた逃げて行った。絶好の機会を失ってしまった。
「何をしているのよ! 追うのよ!」
私の声にその警官ははっとして小泉の後を追った。前を見ると若い警官が小泉を追追いかけていた。彼の方が接近している。拳銃で狙える距離だ。
「止まれ! 止まらないと撃つ!」
その若い警官は空に向けて「パーン!」と威嚇射撃をした。小泉はその場で止まりはしたが、振り返ってすぐにライフル銃を構えて撃った。
「パーン!」
「うわあ!」
その若い警官は撃たれてその場に倒れた。
「山口!」
それを見た30過ぎの警官が目を見開いて声を上げた。そしてその若い警官に駆け寄った。
「伏せて!」
私はそう叫びながら身を地面に伏せた。小泉の腕ならこの距離で狙らったら外さないだろう。しばらく私はじっと様子をうかがっていた。だが銃声は聞こえてこない。顔を上げると、小泉は私たちに銃を向けることもなくそのまま逃げ去っていた。私は立ち上がって追いかけたが見失ってしまった。
◇
私が戻ってくると30半ばの警官は若い警官の左腕を縛って止血していた。
「山口。すまなかった。俺が不甲斐ないばかりに・・・」
「先輩。大丈夫ですよ。かすり傷ですし。僕の方がいつもは先輩に助けられていますから」
彼は心配させまいとして笑顔でそう言っていた。命には別条なさそうだ。私はほっとしたものの、30半ばの警官に対して少し腹を立てていた。
「どうして撃たなかったのですか! 犯人の前にいたのに・・・。どうしてですか!」
私は強い口調で問い詰めた。その警官はうつむき加減に答えた。
「申し訳ありません。自分は・・・人を撃つのが怖かったのです・・・」
「そんなことで? あなたの同僚は撃たれたのですよ!」
私はあきれてしまった。警察官なのに拳銃を撃つのが怖いとは・・・。いくら凶悪事件になれていないとはいえ、これでは困るだろう。
「射撃が苦手かもしれませんが、それでは困ります。警察官としての自覚を持ってください!」
私の叱責の言葉にその警官はうなだれていた。
大崎は逮捕したがケガをしていることもあり、私たちは一旦、山を下りることにした。あの30半ばの警官は責任を感じていたのか、ずっと暗い顔をしていた。
撃たれた若い警官と犯人の1人の大崎は救急車で運ばれていった。あの30半ばの警官は他の警官たちと周辺の警備についていた。彼は時折、右手を見ていた。拳銃を撃てなかったことを自ら責めているのかもしれない。
小泉には逃げられてしまった。彼はライフル銃を持っている。早く見つけて逮捕しなければまた被害者が出るかもしれない。山狩りでもしなければならないが、それには人員もいるし、準備に時間がかかる。私たちは応援を待つしかなかった。
そんな時だった。パトカーに無線連絡が入ったようだ。山中巡査部長が知らせてくれた。
「小泉が町に現れたそうです。目撃情報がありました」
「わかりました。すぐに向かいます。どの辺りですか?」
「パトカーに先導させます。捜索に部下を使ってください」
私は藤田刑事と車に乗り込み、パトカーに先導されて目撃情報のあった場所に向かった。今度こそ小泉の身柄を押さえなければならない。
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