Aパート
都内で宝石強盗殺人事件が起こった。犯人は2人、そのうちの1人がライフル銃を持っていた。彼らは宝石店に押し入り、店員を射殺して高価な宝石を奪った。そしてそのまま用意しておいた車に乗り込み逃走を図った。
だが宝石店から通報を受けた巡回中のパトカーがその車を発見した。猛スピードで逃げる車を追跡し、応援のパトカーも呼んで何とか停めようとした。だがライフル銃でタイヤを狙い撃たれ、みすみす犯人を取り逃がしてしまった。
だがその車の足取りはすぐにつかめた。どうも多摩方面に向かったらしい。その報告を受けて、私と藤田刑事が向かうことになった。車中に無線で犯人についての情報が送られてくる。
「犯人は小泉徹35歳と大崎順二32歳の2人だ。小泉は競技ライフルの大会で何度も優勝している射撃の名手だ・・・」
厄介な相手だった。うかつに近づくと撃たれてしまうだろう。こちらが拳銃ではかなり分が悪い。そしてまた無線連絡があった。
「西多摩で逃走車両を発見。場所は・・・」
そこは私たちのいる場所と近かった。付近にまだ犯人がいるに違いない。私たちはすぐに向かった。
◇
逃走車両は生い茂った木々の間に突っ込んで隠されてあった。その車両のそばには3人の警官が立っていた。私は車を降りて警察手帳を示しながらその中の年配の警官に声をかけた。
「城西署の日比野です」
「ご苦労様です。西多摩署の山中です」
山中巡査部長は敬礼して答えた。
「これが犯人のものと思われる車両ですね」
「巡回中の警官が発見しました。すでに誰も乗っていない状態でした」
「この付近に犯人が潜んでいる可能性があります。すぐに捜索したいと思いますが・・・」
「わかりました。道案内をつけましょう。おい! 刑事さんと一緒に行ってくれ」
山中巡査部長は2人の警官に声をかけた。
「もうすぐ鑑識が来ると思います。私はここでこの車を見張っております」
「ではお願いします。部下の方をお借りします」
私と藤田刑事は2人の警官の案内で山の中に入った。一人は30半ばの落ち着いた雰囲気の警官、もう一人はまだ20代前半の若くて元気な警官だった。
「宝石店を襲った2人組の強盗殺人犯だ。一人はライフル銃を持っている・・・」
その道々で藤田刑事が犯人の特徴について2人の警官に説明した。すると30半ばの方の警官が聞き返した。
「ライフル銃ですか?」
「そうだ。かなりの腕前のようだ。くれぐれも注意してくれ。場合によっては拳銃を使用することになる」
「そうですか・・・」
その警官は暗い表情になった。射撃に自信がないのかもしれない。毎年、練習はしているとは思うが・・・・。すると横にいる若い警官が言った。
「先輩。大丈夫ですよ。刑事さんもいるし、発砲することはないですよ」
そして彼は私たちにこう言った。
「この西多摩じゃ凶悪な事件なんてないですから慣れていないのですよ。拳銃を発砲することなんてないですし・・・」
「そうなのですね」
「でも僕は射撃は得意な方です」
「それは頼もしいですね。あなたはどう?」
私は30半ばの警官に尋ねた。
「自分は・・・撃ちたくないです・・・」
何とも頼りにならない返事だった。警察官である以上、それでは困るのだが・・・。
それからしばらく歩いた後、30半ばの警官が何かを感じたのか、私たちを左手で制した。
「この先に誰かいます!」
私と藤田刑事は拳銃を抜いた。すると向こうの木々の間に2人の人影が見えた。1人は銃の様な長いものを持っている。私たちが追っていた犯人の男たちのようだ。私たちは彼らに気付かれないように接近しようとした。だが草の中を歩き回る音ですぐにこちらの動きを勘づかれてしまった。
「パーン!」
いきなり銃声が鳴り響いた。向こうからライフルを撃ってきたのだ。私たち全員が身を伏せた。幸いにも誰にも命中しなかった。犯人の1人はライフル銃の名手だ。うかつには近づけない。藤田刑事は拳銃で犯人の方を指しながら言った。
「俺が犯人を引き付ける。日比野たちは回り込んで犯人たちを包囲してくれ!」
「わかりました」
3人いれば包囲できるはず・・・私は警官2人を連れてそこから離れた。背後で撃ち合う音が聞こえる。草むらを身をかがめて歩き、犯人の左側面のところで止まった。
「あなたはここにいてください。あの木の陰に犯人がいます。彼らは藤田刑事に気を取られているはずです。私が向こうから追い立てますから、犯人が出てきたら発砲して足を止めてください」
30半ばの警官にそう指示して彼をそこにを残した。そして若い警官を連れて犯人の背後に回った。
「あなたはここで待機してください。私が撃ったら犯人に接近してください」
若い警官にも指示した。私は一人でまた草むらを潜り抜けて犯人の右側面についた。これで包囲は完了した。
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