神の手

広之新

プロローグ

 真っ昼間の街にけたたましくパトカーのサイレンが鳴り響いていた。1台の車が猛スピードで街を走り回り、その後をパトカーが追跡していたのだ。


「停まりなさい! 前の車! 停まりなさい!」


 だがその車は呼びかけを無視して停まろうとしない。パトカーを振り切ろうとさらにスピードを上げた。赤信号であってもそれを無視して突っ走り、タイヤを鳴らして左右に車体を振っては前を走る車を次々に追い抜いていく。角を何度も曲がり、時には狭い路地の中も通り抜けた。


 だがパトカーの方も負けてはいない。同じくタイヤをきしませながら執拗に追いかけている。また別方面からの応援のパトカーも加わって4台となり、その暴走車を追いかけていた。


「停まれ! 停まるんだ!」


 パトカーが何度も警告した。すると車の助手席の窓が開き、サングラスとマスクをした男が顔を見せた。


「うるせえ!」


 男の手にはライフル銃が握られていた。彼はいきなり銃を構えてパトカーに向けてぶっ放した。


「パーン!」


 銃弾は一台のパトカーのタイヤに当たりバーストさせた。そのパトカーはコントロールを失って道を外れて街路樹にぶつかって止まった。


「どんなもんだ! くたばりやがれ!」


 さらに男は3発撃った。


「パーン! パーン! パーン!」


 3発の銃弾それぞれが追いかけてくる3台のパトカーにタイヤをとらえた。


「キーッ! ガシャン! ガシャン! ガシャン!」


 いずれのパトカーも道から外れていった。恐るべき射撃の腕だった。


 男はマスクの下でニヤリと笑うとライフル銃を引っ込めて窓を閉めた。もうその車を追うものはない。車はそのまま街を抜け、郊外に走り去った。カーチェイスが終わった街はまだ騒然としていた。

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