テントウムシの手

京極道真  

第1話  偶然の手

僕は運がいい。

学校でテスト中、

消しゴム忘れてあたふたしていると

廊下を歩いていた隣の生徒だろうか?

顔の認識ができないが、

スーッと教室に入ってきて僕の机の上に

消しゴムをおいてくれた。

ラッキーだ。

机の上。テスト用の上。

制服の袖からしたの

手のひらから消しゴムが見えた。

他の生徒はテストに夢中で顔をあげない。

たまたまか先生も机にプリントに目を落としている。

『誰も気づいていないのか?』

『えー!』とか『誰か教室に入って来てますよ先生!』と言う生徒は誰もいない。

テスト中だからか?

僕はとりあえず、テスト中はその消しゴムを使った。

チャイムが鳴る。

テストが終わる。

後ろからテスト用紙を前の席の人に渡していく。

気づくと消しゴムは消えている。

僕は不思議に思い

「さっきテスト中、隣の生徒が教室に入って来たよな。」

隣の奴に話を振る。

「気づかなかったぞ。」

「そっか。」

『まただ。』

こんな感じで不思議なことが小さい頃から時々あった。

学校の階段でダッシュで下り、

最後の3段上履きがすべった。

硬いコンクリートの階段下に落ちた。

『痛い。』

「?」

たくさんの誰かの手が僕の制服のズボンを

つかんで。

助けてくれた。

もちろん、しりもちは、ついたが

たいして痛くない。

階段下にいた友達が僕に駆け寄る。

「シュン、大丈夫か?」よっちゃんだ。

「ああ。大丈夫だ。」

もちろん僕の後ろに誰もいない。

しかし誰かが僕のズボンをつかんでくれた。

コワいとは思わない。

たとえ、それが生きてる人間でも、

そうでないものも、神様でも、もちろんお化けでも虫でも僕はコワくわない。

ただ正直感謝しかない。

『ありがとうだ。』

誰かが僕を助けてくれているのは間違いないからだ。

一番幼い記憶はそう。

あれは小学校に入る前の夏。

僕は小さい頃から虫が好きだった。

ある日、公園の砂場で遊んでいた。

そこにテントウムシが間違ったのか、

疲れたのか?砂の上に飛んで来た。

友達のよっちゃんたちは目ざとく見つけて、

「テントウムシだ。捕まえろ。」

手で砂場のテントウムシをバチバチ叩きながら捕まえようとしている。

が砂に埋もれてなかなか捕まえられない。

そのうち「ズルズルズルー」っと砂の中に

入って見えなくなってしまった。

今の高校生の僕が振り返ってみても、

あの頃の5才児にとっては、

ただの無邪気な行為に過ぎない。

よっちゃんをかばうわけではないが。

特に罪の意識はなさそうだ。

しかしその頃から虫好きの僕にとっては

砂の中に潜るのはテントウムシにとっては

かなり息苦しい行為だ。

人間が水の中で息をできないように

テントウムシも砂の中では息ができない。

「わぁー」っと砂場をあきてすべり台を

目指して走って行ったよっちゃんたちを追いかけず。

僕は砂の中を手でそーっとかき分けて

赤と黒のナナホシテントウムシを探した。

「いた。」

僕は手のひらでテントウムシをすくった。

手のひらの中。

「シュン。ありがとう。一寸の虫にも五分の魂。」

5才児の僕には「?」用語がわからない。

今更だけど『いつか恩返しするよ。』ぐらい、分かりやすく言ってくれると良かったんだがな。

あれから10年近く経つ。

いまだに僕のことを

こうして助けてくれる。

そういえば一度夢の中にテントウムが

出てきて。

『僕には手足が6本ある。不思議な力の手さ。

人間達も僕を見るとラッキーなことが起こるって言われてるだろう。

その通りさ、テントウムシは妖精なのさ。

だから不思議な力も使える。

シュン。君が君である限り。

テントウムシの僕は

何度でも君をこの6本の手で、すくうよ。

そしていつか僕が人間に転生した時には

友達になってくれよ。シュン。』

『もちろんさ。』夢の中でこう僕は答えた。

偶然のラッキーな出来事はテントウムシの

おかげだった。

偶然は必然だ。

今日も僕は僕で生きて行くよ。

新学期が始まる。

「転校生だ。」

「七星ジュウだ。ヨロシク。」

僕は見ただけで彼があの時のテントウムシだと分かった。

「ジュウ。転生したのか?」

「あー。そうだ。10年かかったが。

今日から宜しくシュン。」

「これから楽しくなりそうだ。」

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