#4:エルの能力

PSOのビルに戻ると、ちょうど照子がパトロールに出るところに出くわした。

「あら?フクちゃんもう戻ってきたの?フルーツサンドは食べられたかしら?」

照子が聞いてくる。

「ただいま戻りました。フルーツサンドは売り切れてしまって食べられませんでした。」

「それは残念ね。」

「ですが良いこともあったので。」

アレクと出会い、フルーツサンドの作り方を教えてもらう約束をしたことを話す。

「それは良かったわね〜」

「幸運でした。」

そしてフクは昨日の猫型ロボットのお礼をしていないことを思い出した。

「そういえば先輩、昨日の猫型ロボットありがとうございました。あれのおかげでスムーズにエルを保護することができました。」

「あーあれね。いいわよ、気にしないで。あれって開発部に押し付けられたのをどうしようか悩んでたのを押し付けちゃっただけだから。」

「そうだったんですか。」

意外な事実に驚くフク。

「だから気にしなくてもいいわよ」

「それでも役にたったことは事実なので。開発部にもっと作ってみるよう言ってみるのもありですね」

「そうねそうしてみるのもいいんじゃないかしら。じゃ、私はこれからパトロール行ってくるわね」

「はい。いってらっしゃい」

そうして照子を見送る。その後、オフィスフロアの自分のデスクに戻り、エルについての報告書を制作する。

(といってもあの子について分かるのは栄養状態が悪いことと、おそらく人が原因の『恐怖症』であるということ。能力を見れていないのが悔やまれるな。)

『恐怖症』患者の能力は精神的に負担がかかることがあり、能力の制御ができないと大きな破壊をもたらし、患者本人を傷つけることがあり、能力の使用を制限したりすることがあるほどで、簡単には使わせるわけにはいかない。

(どうしたものか...)


       ◆◇◆◇◆◇◆


フクが悩んでいた頃、エルもまた悩んでいた。よく眠り、起きたのはいいが、部屋に一人は少し寂しい。

(端末を使えば呼べるのかな...)

端末を使ってフクを呼べると思ったが、ただ寂しいからという理由で呼び出すのは迷惑をかけないか、また、それによってフクに嫌われないかという疑問が浮かぶ。

(もし、フクさんに嫌われたら...)

無論、その程度で人を嫌いになるフクではないが、孤独な少女にとってはもしもを考えると酷く恐ろしく、呼び出す勇気が持てなかった。

その時、ノブのない扉の方からエルのことを呼ぶ声が聞こえた。

「エル、私だ、フクだ。起きているか?」

「フクさん?」

「あぁ、フクだ。今の調子はどうだ?」

「お粥を食べて、お腹一杯になって眠くなって起きたところです。」

「そうか、元気そうでよかった。ちょうどエルにお願いがあるんだ。」

「お願い?」

「あぁ、君の体調管理のために色々お話をしたり、検査をしたりするんだ。」

エルはフクの頼みならと受けようと思うが、

「ただ、猫の姿では難しい検査もあるから、私と直接会ってほしい。」

と、言われて硬直した。

今まであった人々はみんなエルに暴力を振るい、まともな食事も与えることがなかった。

しかしフクはきちんと食事をくれるし、暴力を振るうこともしないだろう、とわかっていても、やはり怖い。

何より、フクと会い、万が一にも傷つけたらと思うと怖くてたまらない。

しかし、ここで協力しなかったら嫌われるのではと思うとどうしたらいいかわからなくなるエル。

「やはり嫌か?」

そう問いかけて来たので悩みながらも正直に答える。

「怖い、です。」

「そうか、なら仕方がない。難しい検査はまた今度にしよう。とりあえず君が一人でもできる検査をしてもいいか?」

「な、なにをするんですか?」

「今からお粥を入れていたところから体重計を渡すから、それで君の体重を測りたい。上に乗って数字が出たら入っていた場所に戻してくれ。」

それから体重を測り、聞き取りをしてエルの身体データをとる。

「ありがとう。今日のところはこれで大丈夫だ。なにか希望はあるか?退屈だったりしないか?」

「す、少し寂しいので猫ちゃんがいると嬉しいです。」

「わかった。用意しよう。だが、今すぐは難しいから少し待っていてくれるか?」

「わかりました。」

「いい子だ。また用があったら端末で呼んでくれ。気軽に声をかけてくれていいからな。」

「!わかりました。」

気軽に声をかけて良いと言われて少し安心したが、それ以上に褒められたことが嬉しいエルだった。

「それじゃあ少し待っていてくれ。」

扉の外から遠ざかる足音が聞こえた。おそらくフクが近くにいたのだろう。少し気が楽になり、やってくる猫に思いを馳せるエルだった。

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Phobia 『恐怖症』 @KAKAO2085

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