#3:フルーツサンドのお姉さん
フクはPSOのオフィスエリアで、照子の姿を探す。
フクはエルとの約束を果たすためにフルーツサンドのありかを知るべく、情報の出所であるの照子に話を聞くことにしたのだ。
「先輩」
「ん?フクじゃない。昨日の『恐怖症』患者の担当になったんじゃなかったの?」
「情報が早いですね」
現在時刻は朝9時、昨日は照子の退勤時間が過ぎてからエルを保護したので出勤時間の8時から一時間の間に聞きつけたと思われる。
「あなたの知り合いの間じゃ結構騒ぎになってるのよ〜?」
「そうなんですか」
「だってあなた滅多に患者の担当になることないじゃない?どういう心変わりなの?」
事実、フクは人と関わるのが苦手なので『恐怖症』患者の担当をしたことがほとんどない。
「あの子が一緒にいてくれと、いってくれたので」
照子は少し意外そうな顔でフクをみる。
「なんですか?」
「いや〜?」
ニヤニヤとしながらフクを見つめる照子。なんだか嫌な予感がしたので話題を変えるために元々の目的を話す。
「そうだ先輩、フルーツサンドのおすすめのお店ってありますか?」
「ん?ついにフクも流行とか気にし始めるお年頃?」
「いえ、エルが...昨日保護した子と約束したので。」
「なるほどね〜、それならウチの近くの商業エリアにオススメのお店があるよ」
フクは照子に詳しい場所を教えてもらう。
「ま、結構な人だかりがあるから行ったらわかるわよ」
「ありがとうございます。すぐ行ってきますね」
「いってらっしゃ〜い。よかったら私にも頂戴」
「わかりました。」
フクは早速ビルを出て商業エリアへと向かう。
(ここは本当に人が多いな。)
商業エリアについたフクはあまりの人の多さに若干辟易しつつもエルのために頑張ろうと考える。
(先輩に教えてもらったのはこの辺りのはず)周囲を見渡すと人混みの中でも一際目立った店がある。看板を確認すると目的のフルーツサンドのお店だ。どうやら列に並ぶ必要があり、順番まで一時間半かかるようだ。
(結構かかるな...)
だが約束したのだから、根気よく待とうと考える。一時間半後、フクの順番が回ってきた。
「ご注文はどれになさいますか?」
「フルーツサンドを二つ」
そういうと店員は申し訳なさそうに
「すみません、フルーツサンドは本日売り切れまして...」
フクは驚愕する。
(この店は8時30分開店、つまりほぼ二時間で売り切れたというのか?)
フルーツサンドの人気に軽く恐怖すら湧いてくるフクである。しかし、エルと約束した手前、諦めるわけにはいかない。とりあえずコーヒーを注文し、店内に入って一息つくことにする。
「ただいま大変混み合っておりまして、相席でもよろしいでしょうか。」
「構わない。」
店員に案内され席に座る。相席した女性はフルーツサンドを食している最中だ。なるほどフルーツがふんだんに使われており、見た目もよく映えそうだ。人気になるのもうなづける。
「どうしたの?そんなにフルーツサンド凝視して。」
相席した女性が聞いてくる。よく顔をみると金髪碧眼で髪をウルフにしており、右耳だけ着けているピアスが煌めいている。かなり顔が良く、周囲の人の中でもかなり目立っていた。なお、あまり自覚がないが、フクも顔が良く、相乗効果で目立っていた。
「いや、フルーツサンドを食べさせると約束した子供がいるのだが、売り切れていてな。気を悪くしたならすまない。」
「なるほどねー。その子と約束破っちゃまずいわけだ。」
女性は気にした様子もなく言う。
「それならさ、自分で作るってのはどう?」
「自分で?」
その発想は無かったフク。確かに無ければ作れば良いのかと納得するフクだが、一つ問題があった。
「手作りの方がその子も喜ぶと思うんだ!」
「それはそうなんだが...」
「何か問題でも?」
「私は料理をしたことがほぼない」
そう、フクは料理をしたことがほとんどないのだ。一応シェアハウスをしていた時代に当番として料理をしたのだが、一口食べた仲間たちから一言、
「「「お前料理当番クビ」」」
と言われてそれ以来まともに料理をしていないのだ。そんな背景を知る由もなく女性が
「それならさ!ウチ来て作らない?教えてあげるわよ!」
「会ったばかりなのにそんなに良くしてもらうのは悪いし、それに、迷惑にならないか?」
「大丈夫よぉ!私一人暮らしだし、これも何かの縁ってことで。」
そう言われてこれ以上意固地になるのも悪いかと思い、了承する。
「わかった。せめてここの会計は私が払おう。」
「いいの?ありがとう!」
女性は気分良く感謝してくる。
「じゃあ自己紹介しなきゃね。私はアレクよ」
「私はフクという。これから宜しく」
自己紹介をして連絡先を交換する二人。フクがコーヒーを飲み干し、アレクがフルーツサンドを食べ切った頃になると、かなりの長さだった行列もかなり減っていた。
「じゃあ私の家行こっか!」
「その前に買い出しに行くべきではないか?」
「確かに!あ、でも私そんなに手持ちないや。どうしよ?」
「私が教えてもらう立場なんだ、私が全額持とう。」
「いいの?フルーツと生クリーム買うとなると結構な金額になると思うけど」
「大丈夫だ、これでも稼ぎは良い方だ」
「なら良いけど」
事実、PSOの給料はかなり良い。特に、エージェント職員は危険も多く、給料が高い傾向にある。
「どっかの大企業なの?」
「そんなところだ」
「すごいね、私はよく金欠になるよ〜我慢とか苦手でさ。それじゃあ買い出し行こっか!」
「了解」
その後、会計を済ませ、お店を出たところで、フクの携帯端末が震えた。
端末を見ると、メールのようだ。内容を確認すると、
「ああ、しまったな。」
「どうしたの?」
「いや、仕事の報告書を書くのを忘れていた。」
エルについての報告書を作成するのを忘れていたのだ。メールはその催促の連絡だった。普段『恐怖症』の患者の担当になることがないので、完全に失念していた。
「大変じゃん!」
「すまない、フルーツサンド作りはまた今度にしてもらえるか?」
「いいよ〜そういうことなら仕方ないしね。」
「ありがとう、ではまた」
「またね〜」
そうしてフクとアレクは別れた。
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