閑話:ひとりぼっちだった少女の幸せ
エルは振動で目を覚ます。
「ん...ここは?」
周りを見渡すと随分簡素なベットの上にいるようだ。そして直前の記憶を思い出す。
(そうだ、私フクさんについていこうとして...)
その時手にふわりとした感触がした。見てみると、一匹の黒い猫がエルのそばで眠っている。
「フクさん?」
声をかけると少ししてから返事があった。
「目が覚めたのか。いま運転中で手がはなせない。寝たままでも会話はできるので心配しないでくれ。」
エルはここは車の中だと気づく。
「どこへむかっているの?」
「私の所属する組織の収容施設だ」
「こわい?」
「少なくともあの施設に対して怖いと言った人を私は知らない。」
エルはどんな施設か全くわからなかったので素直に聞いてみることにした
「どんなとこ?」
「君たちのような『恐怖症』を発症した人たちを調べる施設だ。人はたくさんいるがなるべく私1人が接する様に手配するから許して欲しい」
まだ寝足りないのかウトウトとするエル。
(もっと...お話したいのに...)
エルからすると久しぶりのまともな話し相手である。何か話しかけられてもクズとかノロマだとか言われた末に殴られ蹴られた記憶しかない。
久しぶりの会話を楽しいと感じていたが、睡魔には勝てないようだ。エルの意識はゆっくりと消えていく。
◆◇◆◇◆◇◆
エルは再び目を覚ますとそこは簡素なベットではなくキチンとバネの入ったベットだった。周囲を見渡すとたくさんの動物のぬいぐるみとデジタル時計(どうやら今は朝9時のようだ)、二つのドア、引き出しのついた机、そして窓があった。ドアは片方はドアノブがなく片方はドアノブが付いていた。
どれほど寝ていたのかはわからないが、かなり回復したので立って窓の外を見てみるとそこには草原が広がっていた。
牧歌的とも言える風景は心を落ち着かせる。
しかしよく見るとこの風景はよくできた映像のようだ。
(つくりものの景色...)
次にドアノブのある方のドアを開けてみる。ガチャリと音を立てて開き、中にはシャワー、洗面台そしてもう一つのドアがあった。ドアにはトイレと書かれた板がかかっておりおそらくトイレなのだろう。どうやらここは洗面所のようだ。
洗面所を出てノブの無いドアを調べてみる。エルが一人ではどうやっても開きそうにない重厚な金属のドアで、ノブがついていないのでどうやらスライド式のようだ。
ドアの横にとってのついた四角い枠があり、軽く引いてみると引き出しのようになっていた。どうやら向こう側に大きく飛び出してドアを開けなくても物の行き来ができるようになっているようだ。中をみるとお粥とスプーンそしてメモが入っていた。
「『少し出かける。腹が減ったらこのお粥でも食べといてくれ。足りなかったら机の引き出しの中の端末で頼めるぞ。なにが用がある時も端末の猫のマークを触ってくれ』」
どうやらフクは出かけているようだ。確かにこの部屋にはあの黒猫はいなかった。少し寂しい気がしたが、それよりも先ほどから空腹感が訴えてきているのでお粥を食べてみる。
(美味しい)
久しぶりのまともな食事に涙を流す。エルの小さくなった胃袋でも食べやすく、全て食べ切ると、久々の満腹感がやってくる。すると再三、眠気が襲ってくる。どうやら自分は相当衰弱していたらしいと自覚する。それなら休んだ方がいいと思い、やってくる眠気に身を任せて眠ることにした。
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