第2話「入学式と、春の出会い①」

入学式。校門の前には春の訪れを感じさせ、僕たち新入生を祝福するかのように巨大な桜の木がそびえ立っている。校門脇に置かれた『入学式』の立て看板が、春の風に揺られながら、新たな始まりを告げていた。


『令和○年度 私立春峯高等学校 入学式』


今回は親が仕事の関係で入学式に参加できないし、

かと言って中学の時からの知り合いがいるわけでもない。周りの人たちを羨ましく思いながらも校門をくぐり抜け、校舎の入り口にあるクラス発表を見る。


校舎の入り口には、教室の場所とクラス名簿が書かれた大きな紙が貼ってあり、その場所には校門よりもさらに多くの人が集まって、友達や保護者と一緒に眺めている。

「うーんと.....一年A組か。場所は.....6号館の

 3階でいいのか」

その紙を見て教室を確認したら他の人と団欒せずに

そそくさと教室の方向へ向かう。教室の場所に関しては学校説明会や、文化祭、入試の際に何度も訪れていたため、大まかな建物の位置関係は事前にわかっていたり、係の先生が校内の地図と、クラス名の書かれた紙を渡してくれたため特に迷うことなく教室の前までたどり着くことができた。


ドアを開けた瞬間、新しい机と椅子の匂いが

僕のところ目掛けて広がっていく。黒板の中央には

座席表が貼られており、僕は自分の名前を探して

指定された席へ向かう。僕の席は一番窓際の一番後ろの列で、その席に座るとそこが僕の居場所になった気がした。


斜め前の席に、僕と同じように静かで背中を丸めた女子が座っていた。

名前も知らない、声も知らない、趣味も知らない

ーーただ、どこか僕と同じような匂いがし、

それでもなぜか視界に残る。

それからしばらくの間僕は自分の席に座って、

一人でこの教室の雰囲気を楽しむ。周りの人はもう

新しいグループを作っており、出身中学や名前など

多岐にわたる質問をしながら親睦を深めていた。


(キーンコーンカンコーン)


するとチャイムが鳴った。ドアから担任の先生が入ってくると同時にみんなが自分の席へ戻っていく。

「えーと、みなさん初めまして!新しく一年A組の

 クラス担任になりました、佐倉結衣です。今年

 赴任したばかりでわからないことも多いですが、

 一年間よろしくお願いします。」

黒色の髪に黒色の目をした身長が小さめの可愛らしい先生。柔らかくて、優しい先生でクラスのみんなは安堵したような表情を浮かべる。

「はぁ、よかったぁ。怖い先生だったらどうしよう

 かと思ったよ」

そう心の中で呟く。

その理由は、友達関連だ。中学の時の僕は今と同じで誰も友達がいなくて、教室の端っこで一人でいる存在。そのため、担任の先生がハズレの怖い先生だった際、何度もひとりぼっちだった僕に対して


『なんで友達を作らないのか?努力が足らないん

 じゃないのか?』


と、なぜか理不尽にキレられたのもあって、高校では優しくて僕にあまり干渉してこない先生がよかったためだ。すると、佐倉結衣先生は、名簿を見ながらみんなの名前を呼んでいく。

「〇〇さーん、〇〇くーん」

テンポよくみんなの名前を読み上げる。

「それじゃあ、自己紹介しよっかっとその前に

 申し訳ないけど体育館で入学式をする時間に

 なっちゃったから続きは戻ってからにしよっか」


廊下で出席番号順になってから、列になって歩く。

体育館までの道のりはやけに短く感じた。距離だけならそう長くはないのだが、周りの人たちはみな楽しそうにおしゃべりしながら歩いていたため、僕の

孤独感がよりいっそう増したからだ。


気づけば、僕らは教室に戻っていた。入学式の内容なんてほとんど頭に残っていない。唯一覚えてると言えば、体育館の入場の際の保護者の目だ。息子、娘の姿を動画に収めようと、真剣な眼差しでカメラを向ける。

ーー本当にそれくらいだった。


担任の先生が教卓に立ち、楽しそうな雰囲気で

みんなに話始める。

「よし、じゃあみんな。これからみんなお待ちかね

 の自己紹介たいーむ」

何かのお祭りかのようなテンションで先生が手に持ったタンバリンで音を奏でる。そのノリについていける人が二人しかおらず、他の人はテンションの高さに驚いていて誰一人声を発せなかった。

ーーそう、ただ二人だけ。


「月島さん、白波さん。ありがとー」

その瞬間、教室内がザワザワし始める。誰からやるのか。あの可愛い女の子だれ?。めっちゃ付き合いたい。など下心丸見えの声がほぼ全ての男子から聞こえてくるが、まぁそれはいいとしてクラスの

テンションが一気に盛り上がる。

ーーそう、ただ一人の男子と

       一人の女子を除いて。


先生が来るまで教室の前方の方で、一際楽しそうに

会話していたグループの中心にいた青髪のノリのいい女の子。月島麗奈さん。人呼んで、

『クラスで一番目に可愛い女の子』

そのグループで同じく中心にいた銀髪のノリのいい

女の子。白波澪さん。人呼んで、

『クラスで二番目に可愛い女の子』

なにやら、クラスの男子たちが本人にはもちろん聞かずに、朝のうちに勝手にあだ名のようなものを作っていた。もちろん、本人の前では言わないと思うが、僕自身あだ名はあまり良くないと思う。


「はいはい、盛り上がりは一旦その辺にして

 順番なんだけど、私がくじを作ってきましたー

 私がそのくじを引くから、引いた番号の出席

 番号の人がその場に立って自己紹介してねー」

なんとも最悪だ。その場に立って、自己紹介するなんてクラスの端っこがお似合いの僕からするとただ

の自殺行為でしかない。この自己紹介で今後の学園生活がすべて決まると言っても過言ではない。

ーーだが僕はこの自己紹介で完全にやらかしてしまうことをまだ知らない。










 



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『クラスで“実質”一番可愛いと思う子と、誰にも言えない関係になってしまったんですが』 神崎りん @kanzaki_rin_x

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