路上占い、あれこれ173悲恋の後編【占い師は涙する】

崔 梨遙(再)

悲恋の後編 1351文字の掌編です。

 ある日、ある時、紅葉が言った。


『私達、このままやとアカンと思うねん』

『え!? どういうこと?』

『柚葉があなたに懐き過ぎてるから』

『なんで? ええやんか。柚葉は最近、僕のことをパパって呼んでくれてるで』

『それがアカンねん。それが怖いねん』

『ごめん、意味がわかれへん。僕は柚葉のパパになるつもりなんやで、柚葉がパパって呼んでくれるなら、こんな幸せなことはないやんか』

『あなた、本当に私と結婚するつもり?』

『そのつもりやで。紅葉との結婚を考えてるって、いつも言うてるやろ? 今更、なんなん?』

『よく考えてや、あなたが30歳の時、私は40歳やねんで、それでも私を愛せる?』

『愛せるよ! 相手が紅葉なら』

『あなたが40歳の時、私は50歳やで、愛せる?』

『愛せるよ! 相手が紅葉なら』

『嘘! そんなんわからんやんか!』

『紅葉は僕の愛情を信じられへんの?』

『信じたいよ、でも、信じられへん』

『歳をとっても僕は紅葉を愛せるよ』

『私もあなたもバツ1やで。離婚すると思って結婚した? 結婚した時は離婚するなんて思わんかったやろ? でも離婚になったやろ? そういうことやねん』

『ちょっと待ってや』

『あなたと結婚して離婚したらどうなる? 柚葉は2回も父親を失うことになるんやで、そんなん、柚葉がかわいそうやんか、もう、柚葉を傷つけたくないねん』

『ちょっと待ってや』

『まさか、柚葉があんなにあなたに懐くと思ってなかったから。柚葉とあなたを会わせるんじゃなかった』

『ちょっと待ってや、僕の話も聞いてくれ』

『何? 何よ?』

『なんでそんなにマイナス思考なん? なんで別れる前提なん? なんで別れない未来を想像できへんの?』

『離婚はトラウマやねん、誰と結婚しても離婚するような気がするねん』

『そのトラウマ、一緒に乗り越えようや』

『アカン、ごめん、無理』

『ほな、僕達はどうなるの?』

『ほんまは別れた方がええんやろうけど、あなたとは別れられない。私の体はあなた無しではいられなくなってしまったから。体があなたを求めてる』

『ほな、どうするん?』

『柚葉に会わせないように会おう。最初からそうしてたら良かったんやね』

『……』



 僕は土曜日に紅葉の家の最寄り駅の前のホテルにチェックイン、紅葉が僕の部屋を訪れる。互いの体を貪り合う。夕方に紅葉は家に帰る。日曜日の昼にまた僕の部屋に来る。求め合う。


『セ⭕レやん!?』


 今の僕でしたら、自分の好みの女性と毎週結ばれるのなら、それはそれでいいと思うかもしれません。ですが、当時の僕は、最愛の女性と体だけで繋がるということがどうしても嫌でした。好きだからこそ、そんな関係で続くのが嫌でした。好きだから別れたくありません。悩みました。ですが、やっぱり紅葉とこんな関係を続けることは出来ませんでした。僕の判断は間違っていたのかもしれませんが。



『もう、会うのをやめよう』

『なんで? 今のままでええやん。もしかして、もう私の体に飽きた?』

『大好きな紅葉に飽きることは無いよ。何回抱いても、飽きないよ。大好きやから』

『ほな、どういうことなん?』

『大好きな人とセ⭕レみたいになるのはツライねん』

『嫌なん?』

『大好きな人と体だけで繋がるのは寂しいよ』

『……本気の別れ話なんやね』

『わかってくれる?』

『だって、あなたは泣いてるから』



『ううん、泣いてないよ』




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路上占い、あれこれ173悲恋の後編【占い師は涙する】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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