第4話 大安良ければ全て良し!
《
現代で最も有名な
1900年4月26日。
さて、満月の日から11日が過ぎたが、エヴァリスの屋敷では相変わらず平穏な日々が続いていた。
ルシェルは《
結界内でも日光は届くのですっかり日に焼け、ルシェルは健康優良児そのものだ。王族特有のプラチナブロンドにオパールの瞳を見なければ、そこらへんの村の子供と言われても分からない、かもしれない。
ちなみに、こんなにも
エヴァリスが張った結界のおかげで外界とは完全にシャットアウトされるのだが、それでは色々と不都合だ。そのため、ガルヴェインとルシェルがやってきた翌日、エヴァリスは結界が張られた屋敷の外に出て何やら魔術を施してきており(半日以上不在だった)、翌々日には屋敷の中の空き部屋を外部との交信部屋となるように改造してくれたのだった。
ガルヴェインは、それから毎日のように王宮に残った仲間と情報交換をするのが日課である。
「今日は村へ行く」
朝から開口一番エヴァリスが言った。
食卓ではガルヴェインが大きな口でマフィンをもさもさと食い、ルシェルが寝癖のついた頭でスープをすくい、シンが半寝ぼけでミルクを飲んでいるときだった。
「どうやって?」
ガルヴェインが疑問を口にするが、それは無視される。
「今日は《
エヴァリスが大興奮で力説する。もちろん、ガルヴェインも無視した。
だが、これはいつものことなのでエヴァリスもなんとも思わないらしい。そして話を進める。
「こほん。ということで、まずはルシェルの魔法の特訓成果を見せてもらおう。合格点が出れば一緒に連れてゆくことにする。となればガル、お前もだ」
エヴァリスの言葉にルシェルはガタリと跳ね上がった。
「エヴァリス!ホント!?」
「ホントだとも。見た目で王族だとバレないように変装すれば大丈夫だろう」
「やったっ!!すぐ支度する!ねぇ、ガルにもシンにも見てもらいたいんだ、いいだろう?」
と、もはや部屋を駆け出しながらそう言い残して自室に向かっていった。元気いっぱいである。
「…ルシェル、本当に変わったな」
ガルヴェインは残りのベーコンをもりもりと口に運びながら笑む。
「ほんとだね〜。言葉遣いもすごくラフだよ。王宮に戻ったとき軽々しく口にしないといいけど」
そう言うのは、毎度心配事ばかり口にする猫。ではなく使い魔のシン。だが、言葉で言うほど心配はしていない。
「ガルヴェインも支度をしてくれ。お前という大食漢がいるせいで備蓄がすっからかんだ。食料を買いに行かなきゃならん。そしてそのための資金も調達しなきゃな」
エヴァリスの発言には言いたいことも聞きたいことが山盛りだが、さっきも質問を無視されたばかりだ。ガルヴェインは大人しく「分かった」と言って席を立つ。
「ねぇ、僕は〜?」
口の周りのミルクをペロリと舐めてシンが言う。
「とりあえずルシェルの特訓の成果は見てやれ。後は好きにしろ」
「オーケイ」
庭先でルシェルのテストは行われた。今日は朝から雲の少ない晴れ日だ。
ルシェルの光魔法はこの数日でメキメキ上達していた。
月の精霊の加護をいただき、魔力を増幅させる魔道具[アウレオルの指輪]をエヴァリスから贈られているおかげもあるが、それにしても、ここへやってきた当初は自信なさげに「魔法が使えない」と言っていたのが嘘のようだ。
「天に輝く七彩の光よ、闇を裂き、正しき道を照らせ――[
ルシェルが呪文を唱えると、体の周りで光が取り巻き始め、掲げた右手に光が集められ発光する。
昼間なので夜ほど劇的に光りは視えないが充分な明るさだろう。
ちなみに、この魔法は光を集めて闇を払う光魔法の一つだ。
「うむ。いいだろう、合格だ」
「やったーーー!ねぇガル、シン!ちゃんと見てた?」
「ああ、凄いな」
「王族しか使えない光魔法か〜。ルシェル、やるねぇ!」
エヴァリスは子供用マントを持ってきた。
最初来た時に着ていた衣装はあまりに上等なものなので、最近は村の子供が着てもおかしくないような粗末で動きやすい服を着ている。マントもエヴァリスのお下がりを子供丈にしたものらしい。
「ではその目立つ髪色と瞳の色を変える」
エヴァリスがそう言い、ルシェルの頭に手を当てると、無詠唱で髪色が茶色に変化した。瞳も暗めのブラウンに変わっている。
「…面白い!色が違うだけなのに僕じゃないみたいだ」
「さ、行くぞ」
支度を整えたガルヴェインも二人の後に続いて屋敷の奥の間にやってきた。
この部屋はガルヴェインが外部の仲間と連絡をとる小部屋として使っており、部屋の真ん中に魔法陣が描かれている。
「ここから行けるのか?」
ガルヴェインがエヴァリスに尋ねる。ルシェルは頭に疑問符が浮かんでいる様子だが、エヴァリスの魔術は予想外のことをなんなくこなす。きっとこの部屋で何かをするのだろうと見守っていた。
「ああ、実はもうほとんど準備はできている。あとは出入口を設置するだけ」
そう言って、エヴァリスは部屋の正面の壁の前に立った。すると、壁にピリピリと亀裂が入っていく。
エヴァリスの身長よりやや高い位置に真横の亀裂が入ったかと思うと、かくんと下に向かって綺麗に長方形を描き出す。亀裂は外壁まで達するようで、隙間から陽光が漏れていた。さらに長方形にかたどられたこの亀裂は盛り上がり、かと思えば模様のように凹みが入り、石の材質が面白いように古びた木材に変わっていった。そして、エヴァリスが右手を差し出すとそこにノブができている。
「ガルたちが来た翌日、私が半日いなかったことを覚えているか?」
エヴァリスがふいに問うた。答えたのはルシェルだ。
「覚えているよ。早朝から夕方まで帰ってこなかったでしょ。僕らを疎ましく思って出て行っちゃったのかと思ったもん」
「にゃはははは!確かにエヴァならやりそうって思われる!」
と笑ったのはシン。それにガルも首肯した。
「確かにエヴァリスはそう思われても仕方がないほど口も悪いし態度も悪い。だが、言葉とは裏腹に、案外律儀で情が厚い奴なんだな、これが」
長年見知った一人と一匹にそんな風に言われたエヴァリスは押し黙ったまま最後の仕上げ魔法をかけている。耳が赤い。
「で?半日居なかった日に何をやってたん?」
シンが問う。
「…隣町に行ってたんだよ」
「隣町にねー、ふーん」
「で?何してたんだ?」
たまにエヴァリスをこうやって褒めてからかうガルヴェインとシン。この時だけは意気投合している。
「…隣町の空き家を一軒借りたんだっ!その家とこの部屋を魔術で繋ぐことで外界との連絡が取れていたんだよ。てことで家賃は全額請求するからな、ガル!!」
そう言って、エヴァリスは懐に入れていた家賃の請求書をばしり、とガルヴェインの胸に叩きつける。
「…はい」
押し付けられた請求書を手に、若干
「さ、行こうか」
エヴァリスがルシェル、ガルヴェインを促しながら出来立てのドアをガチャリと開けると、外にはなんと人がいた。
「…!」
ルシェルが目を丸くする。
人だけではない。家屋があり、馬車が往来し、村の子どもたちが走り抜けていく。
「ここが、屋敷から一番近い村、ヴェルトだ」
《
“巳”とは、弁財天の遣いとなった蛇のこと。芸術の神、弁財天との結びつきが強い開運日。
芸術・芸能・勝負事・学力・学問・財運といった運気を上げてくれるといわれている。
財布の買い替えや使い始め、お金にまつわることをするとよい。
約十二日に一度巡ってくる。
《
神社への参拝や祭礼などに適した縁起の良い日とされる。お墓参り、先祖を祀る行為も吉。
一年の半分以上の日が神吉日になるとされ、他の吉日と重なる場合は縁起が良く、さらに運気が高まると考えられている。
《
慶事を行うのに良い日とされ、母が子を育てるのと同じように、天が人を慈しむ日という意味なので、特に結婚に関することや何かを作り始めること、また子供の成長を祝う行事などに適した日と言われている。
平均して月に四〜五回ほど巡ってくる吉日。
《
天地が開け、隅々まで日の光で照らされることを意味し、万事において吉とされる日。
吉日のなかでも比較的頻繁に訪れる。
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東の魔女の開運手帖 ~西洋魔術を極めるより、日本の暦に従う方が幸せになれるって本当ですか?~ @yamagata13
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