第3話 何かが違う
やり直しがない朝を迎えた。団員からの報告で私は最初の頃から1年前に帰って来たようだった。
いつも通りアルト様を起こしに行くといつも眠っているはずなのに起きていた。
そして、何より私に警戒心を抱いていた。
アルト様の寝着に手をかけると自分でやる、と言った。
こんなことは初めてだった。
「いえ、しかし……私にやらせて下さい」
アルト様は困惑した表情をしながら承諾してくれた。ただ、私の指が触れただけなのに僅かに震えていた。
そして、アルト様は記憶が欠落しているようだった。私が何度も戻ってきてしまった代償なのだろうか。
「あれ、お前のネックレス。そんな色だった?」
私はネックレスを隠した。魔法石が力を果たしてしまった姿だ。
そして初めて朝食に誘われた。
私は嬉しかった。
食堂で食事を取っていると食べ方が綺麗だ、と言われた。
アルト様は本当に記憶がなくなってしまったのだろう。
食事は貴方に教えて貰ったのに。
「髪の毛、上手く縛れないんだ。ユーリが毎日結ってくれる?」
記憶はないのに、このお願いだけは変わらなかった。私はアルト様の髪に触れる。
幸せな一時だった。
違和感を感じながらも数日が経った頃。ゴブリンが出た。背中に怪我をしてしまった。血を流しすぎてふらつき、眠らされてしまった。
目が覚めるとアルト様が私に触れていた。
既に遅かった。目の前が赤く染まっていく。
もう、終わってしまうのか。
しかし、視界が開けると朝だった。ベッドが汚れていた。何があったのか私は理解した。
急いでアルト様の部屋に行くと彼は生きていた。
アルト様を起こす。寝着の隙間から赤い花が見えた。
「…それ、なんですか」
「え?」
覚えてないのか、と言いたげな顔をしていた。アルト様は答えを濁していた。私の独占欲が付けた印。
嬉しかった。
だが、ボタンを外すと首には噛み跡があった。剣がないのなら歯で噛み切ろうとしたような勢いの跡だった。
綺麗な肌に残された噛み跡に回復魔法をかける。
アルト様が私をじっ、と見てきた。
「いつも笑わないなって」
それはきっと貴方を何度も手にかけてきたから。
「……壊れてしまったんでしょうね」
そんな私のことをアルト様は家族だと言った。私は家族以上の存在になりたかった。
「ユーリ、この魔法陣はなんだ」
祖母以外見えていないはずの呪いをアルト様が見つけてしまった。
私はそれを隠し、アルト様の髪を結っていく。
どうか、死なないでと髪紐に願いを込めた。
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