第二十二章 それぞれの未来

金城との戦いから、半年が経った。

 世界は、確実に変わりつつあった。

 帝国との和平は、正式に締結された。国境は開かれ、人々の行き来が始まった。

 廃鉱山の違算も、完全に解消され、今では新しい鉱山として再稼働している。

 真琴が最初に救った村も、以前より繁栄していた。井戸の水は清らかになり、住民たちは健康を取り戻した。


     ◇


 ガルドから、手紙が届いた。


 『帳尻へ

 娘が見つかった。

 帝国の孤児院にいた。十五年ぶりの再会だった。

 彼女は俺のことを覚えていなかったが——これから、少しずつ取り戻していく。

 お前のおかげだ。

 ありがとう。

                   ガルド』


 真琴は、手紙を読んで目頭が熱くなった。

 「よかった——」

 ガルドの娘が見つかった。

 十五年の空白を埋めるのは、簡単ではないだろう。

 しかし——ガルドなら、きっとやり遂げる。


     ◇


 リリアからも、手紙が届いた。


 『マコトへ

 魔法学院での生活は、思ったより大変!

 でも、毎日が楽しいよ。

 違算についての研究も、少しずつ進んでる。

 まだまだ、マコトには追いつけないけど——いつか、一緒に仕事ができたらいいな。

 また会えるの、楽しみにしてるね!

                   リリア』


 真琴は、微笑んだ。

 リリアも、自分の道を歩み始めている。

 いつか——彼女の研究が、この世界を救う力になるかもしれない。


     ◇


 エリナは、相変わらずギルドで働いていた。

 しかし、最近は「副ギルドマスター」に昇進したらしい。

 真琴がレイブリッジを訪れると、彼女は嬉しそうに報告してくれた。

 「帳尻さんのおかげで——私も、頑張れるようになったの」

 「俺は、何もしてないよ」

 「してるよ。帳尻さんを見てると——努力は報われるんだって、思えるから」

 エリナは、照れくさそうに笑った。

 「これからも——応援してるね」

 「ありがとう」


     ◇


 金城のことも、わかった。

 女神の言葉通り、彼は記憶を失っていた。

 今は、王国の農村で、一人の農夫として暮らしているという。

 名前も、「タケシ」という簡素なものに変わっていた。

 真琴は、一度だけ彼を見に行った。

 畑を耕す金城——いや、タケシの姿は、以前とは全く違っていた。

 穏やかな表情。汗を拭う手。土にまみれた服。

 「よう」

 真琴が声をかけると、タケシは不思議そうな顔をした。

 「誰だ、あんた?」

 「……通りすがりだ。畑、立派だな」

 「ああ、ありがとう。まだまだ下手だけどな」

 タケシは、照れくさそうに笑った。

 その笑顔には、以前の金城の面影はなかった。

 「頑張れよ」

 「おう。あんたも」

 真琴は、タケシに背を向けた。

 これで——いいのだと思った。

 金城は、新しい人生を歩み始めている。

 今度こそ——自分の力で。


     ◇


 王宮に戻ると、シルヴィアが待っていた。

 「おかえりなさい」

 「ただいま」

 「どこに行っていたの?」

 「ちょっと——昔の知り合いに会いに」

 「そう」

 シルヴィアは、それ以上聞かなかった。

 彼女は、真琴の心を理解していた。

 「今日は——お祝いですよ」

 「お祝い?」

 「真琴さんがこの世界に来て——ちょうど一年だそうです」

 「一年——」

 もう、そんなに経ったのか。

 「女神様から、聞きました。今日が——転生した日だって」

 「そうか——」

 真琴は、窓の外を見た。

 一年前、スーパーのレジ締めをしていた自分。

 あの頃は——何も持っていなかった。

 しかし今は——

 「シルヴィア」

 「はい?」

 「ありがとう」

 「え?」

 「この一年——俺を支えてくれて。一緒にいてくれて」

 シルヴィアは、少し頬を赤らめた。

 「私こそ——ありがとうございます。真琴さんがいてくれて——」

 「これからも——」

 真琴は、シルヴィアの手を取った。

 「一緒に、いてくれるか?」

 「……はい」

 シルヴィアは、涙を浮かべながら頷いた。

 「ずっと——一緒に」

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レジスタッフ異世界転生_違算の勇者 ~レジ打ちスキルで異世界の帳尻を合わせます~ もしもノベリスト @moshimo_novelist

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