第十三章 金城の正体

翌日、思わぬ情報がもたらされた。

 帝国軍の兵士が、一人、投降してきたのだ。

 「金城様に——ついていけなくなった」

 男は、怯えた目で語った。

 「あの方は、人間じゃない。いや、人間かもしれないが——やることが、狂ってる」

 真琴たちは、男を尋問することになった。

 「金城について、知っていることを全て話せ」

 ガルドが、厳しい声で言った。

 男は、震えながら語り始めた。


 「金城様が現れたのは、半年ほど前のことです」

 男の声は、かすれていた。

 「最初は、どこからともなく現れた流れ者でした。身元も、出自も不明。でも——能力だけは、本物だった」

 「能力?」

 「ええ。あの方は——奪うことができるんです。何でも」

 男の目が、恐怖に揺れた。

 「最初に奪ったのは、皇子様でした」

 「皇子を——奪った?」

 「文字通りです。皇子様の——存在そのものを、奪い取ったんです」

 真琴は、息を呑んだ。

 精算眼で見た情報——「皇子の地位(強奪により取得)」の意味が、ようやく理解できた。

 「皇子の地位だけじゃない。記憶も、人間関係も、血統すらも——全てを奪い取って、自分のものにした。今、帝国で『皇子』と呼ばれているのは、金城様——いや、金城という男です。本物の皇子は——」

 「どうなった」

 「消えました。存在ごと、奪われたんです。跡形もなく」


 沈黙が、部屋を支配した。

 「それだけじゃない」

 男は、続けた。

 「金城様は——その後も、奪い続けています。貴族の財産を奪う。将軍の才能を奪う。敵の命を奪う。そして——国の資源すらも、奪っている」

 「国の資源?」

 「帝国で起きている資源枯渇——あれは、金城様が奪っているんです。どこに蓄えているのかはわかりませんが——帝国から奪った富は、全て金城様のものになっている」

 「自国の資源を、奪っている……?」

 リリアが、信じられないという顔をした。

 「なぜ、そんなことを——」

 「金城様は言っていました。『この世界の全てを、俺のものにする』と。国も、人も、歴史も——全てを手に入れると」

 男の声が、震えた。

 「最終的な目標は——『世界帳簿』を奪うことだそうです」

 「世界帳簿?」

 真琴とシルヴィアが、同時に反応した。

 「世界の全てを記録した、神の帳簿。それを奪えば、世界の管理者になれる——金城様は、そう信じています」


 尋問が終わった後、真琴たちは深刻な顔で話し合った。

 「世界帳簿を、奪おうとしている……」

 シルヴィアが、呟いた。

 「それが本当なら——取り返しのつかないことになります」

 「世界帳簿って、本当に存在するんですか?」

 真琴が尋ねると、シルヴィアは頷いた。

 「存在します。世界の中心にある『始原の神殿』に。私も、一度だけ見たことがあります」

 「それを、金城が——」

 「奪えば、彼は文字通り『世界の神』になれます。全ての命、全ての資源、全ての歴史を——思いのままに操れる」

 想像もできない規模の話だった。

 しかし、金城ならやりかねない——真琴は、そう確信していた。

 あいつは、元の世界でも同じだった。

 他人の成果を奪い、手柄を横取りし、自分だけが得をすることしか考えていなかった。

 その性格が、この世界で能力と結びついた結果——

 「止めなければ」

 真琴は、言った。

 「あいつを、止めなければ。この世界が——」

 「しかし、どうやって」

 ガルドが、腕を組んだ。

 「金城の能力は、お前の精算眼を上回っている。今のままでは——」

 「わかってます」

 真琴は、拳を握りしめた。

 「だから——もっと強くなる。精算眼の真の力を、引き出す」

 女神が言っていた。

 「引き出されていない力がある」と。

 それを——見つけなければならない。

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