磔から始まる異世界転生 ――カンスト状態の俺は、まだこの世界を“夢”だと思っている
おとち
第1話 いつもの感覚
消えた――。
背後から、鋭い痛みが走る。
「――っ!?」
何が起きたのか理解する前に、衝撃が体を貫いた。
遅れてやってきた痛みが、脇腹を深くえぐる。
白い鎧のプレイヤー。
さっきまで、確かに正面で間合いを取っていたはずだった。
(……消えた?)
視界を走査する。
いない。
いや、いる。――背後だ。
(ワープ? いや、そんなスキルは……)
次の瞬間、脳裏に最悪の言葉が浮かぶ。
――ラグスイッチ。チートか!
ありえない。
だが、そう考えないと説明がつかない。
黒光りする片手剣が閃き、連続して攻撃が叩き込まれる。
ヒットポイントが、目に見えて削れていった。
反撃する。
確実に捉えた――はずだった。
だが、刃は空を切る。
「……くそっ」
次の瞬間、再び脇腹に衝撃。
焼けるような痛みが全身を駆け巡り、思わず声が漏れた。
(……やばい)
ゲームなのに、こんな感覚はありえない。
なのに――
あまりにも、生々しい。
(誰だ……?)
視界が白く滲み、音が遠のいていく。
(……キル、されたな)
*
「……うぅん」
小さな寝返りに、意識が引き戻された。
頬に触れる、柔らかな感触。
目を開けると、見慣れた天井とダブルベッド。
腕の中には、小さく丸まった娘。
その隣で、妻が穏やかな寝息を立てている。
(……夢、か)
心臓が、まだ少し速く脈打っていた。
あまりにも現実感のある夢だった。
特に、あの痛み。
(最近、ゲームをやりすぎてるな……)
娘の頬に、そっとキスをする。
小さく身じろぎするのを確認して、再び目を閉じた。
守るべき日常。
この生活のために、明日も仕事だ。
そう思いながら、意識を手放す。
――そして。
次に目を開いた瞬間。
俺は、
ログアウトできない世界に立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます