第8話戦争回避条件

 城の大広間。


 バルモアからの使者が、王都の中央に立っていた。


 黒い鎧に金の飾り。

 威圧的な雰囲気を漂わせる男――使者長の様子は、戦いに慣れた兵士のそれだった。


「アストファル王国は、我が国の属国となる」


 男は淡々と告げる。


「そして女王アリエル殿は、バルモア王子の妃として迎える」


 その言葉に、城内は凍りついた。


 アリエルは、表情を崩さない。


「私は――アストファル王国の女王です」


 使者長は軽く笑った。


「女王など、いくらでも代えがきく」


 その瞬間、俺の中で何かが切れた。


「黙れ」


 俺は前に出た。


「あなたは何も知らない」


 使者長は俺を見て、嗤った。


「異世界人よ。お前の魔法がどれだけ強かろうと、国と国の力の差は埋まらない」


 アリエルが、静かに言う。


「それでも……私は、この国を守ります」


 俺は、アリエルの言葉に胸が熱くなった。


「なら、戦う理由はある」


 使者長は言う。


「だが、戦争は避けられる」


 俺は言い切った。


「条件がある」


 その瞬間、アリエルが俺を見た。


「レオ……」


「聞け」


 俺は使者長に向き直る。


数日後に我アストファル国に来て話をしようではないか。

数日後、バルモア王が、アストファル城に来訪した。


 金の冠を被った男は、威厳と恐怖を同時に漂わせる。


「アストファル女王アリエル。

 お前の国を我が国の属国にしようと思ったが――」


 王は、ゆっくりと笑った。


「お前の国は、面白い」


 そして王は、俺を見た。


「異世界から来た少年よ。

 お前は我が国の将来を見据えている」


 エリシアが言った。


「私は、私の国を守ります」


 バルモア王は頷く。


「なら、我が国と同盟しろ」


 そして、最後に言った。


「だが――

 その同盟は“お前が選んだ道”であることを、

 世界に示せ」


 アリエルは、静かに言う。


「示します」


 そして俺に視線を向けた。


「レオ」


「はい」


 アリエルは微笑む。


「あなたと、婚約しました。

 それは、私の意志です」


 バルモア王が、満足そうに笑った。


「よかろう」


 その瞬間。


 アルトリア王国は、

 戦争を回避した。


 戦わずに、

 “同盟”で守られた。


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