第7話 婚約
城に戻ったアストファル王国は、静かだった。
民は、女王が無事に戻ったことを喜んでいる。
だが、城内の空気は重い。
宰相ハロルドが、アリエルの前で頭を下げた。
「陛下。国境で、バルモア軍の動きが確認されました」
「……やはり」
アリエルは疲れた顔で言った。
「彼らは、私を奪い、脅しをかけた」
その言葉に、俺は拳を握った。
「なら、次は国を奪いに来る」
「その前に、あなたは王国の象徴だ」
俺は言った。
「象徴は、守られるためだけにいるんじゃない」
アリエルが、少し驚いた顔をする。
「あなたは、何を言っているのですか」
「国を守るなら、戦うだけじゃない。
“結ぶ”こともできる」
アリエルは、俺をじっと見つめる。
「結ぶ?」
「うん」
俺は深呼吸する。
「あなたと、婚約する」
アリエルの瞳が揺れた。
「……いきなり、何を言うのですか」
「今の状況で、政治的に結婚は有効だ」
「それだけじゃない」
俺は続けた。
「俺は、あなたが好きだ」
言葉が、出た。
彼女の頬が、赤く染まる。
「――レオ」
「俺が異世界人でも関係ない」
「あなたは、私の国を救ってくれた」
「いや」
俺は首を振った。
「救ったのは、あなた自身だ」
アリエルは驚いたように目を見開く。
「私が?」
「あなたが、民のために立ち続けたからだ」
俺は彼女の手を取り、強く握る。
「俺はその力を、後ろから支えたい」
その瞬間、アリエルの目に涙が浮かんだ。
「……私も、あなたを守りたい」
「守るって?」
俺が聞くと、彼女は小さく笑った。
「私の国だけじゃなく、あなたも」
少しの沈黙。
アリエルが口を開く。
「……レオ」
「ん?」
「婚約しましょう」
言い方は、女王らしい。
でも、瞳は少女のように震えている。
「私の意思で、あなたと結ばれたい」
その言葉に、俺は胸が熱くなった。
「――ありがとう」
俺は頷いた。
「婚約、しよう」
「俺が一生お前を守る」
アリエルは頷き、俺に近づいた。
そして、城の中庭で。
彼女は、俺にキスをした。
軽く、短いキスだった。
だが、それは確かな約束だった。
――この国の未来も、二人の未来も。
その直後、宰相が慌てて入ってくる。
「陛下! 緊急の報告です!」
「何です?」
「バルモア王国が、こちらへ軍を進めています!」
アリエルは、静かに立ち上がる。
「分かりました」
彼女は俺の手を握り、力強く言った。
「レオ。私たちは、今度は逃げません」
俺は頷く。
「その覚悟なら、俺は君を守る」
夜空に、雷が走る。
――婚約は、国を救うための宣言でもあった。
そして同時に、
俺の“王”としての道が、始まった。
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