エピローグ「陽だまりの記憶」

 数年が経ち、王城の庭園はさらに美しく整備されていた。

 晴人とレグルスが並んで散歩をしていると、足元に小さな影がじゃれついてきた。

「パパ! ママ!」

 それは、小さなライオンの耳と尻尾を持った、愛らしい男の子だった。二人の間に生まれた、奇跡の子供だ。

「こら、レオ。ママに飛びつくと危ないぞ」

 レグルスがひょいと子供を持ち上げる。父親の顔だ。

「だって、ママいい匂いするんだもん!」

「ふん、その匂いは俺のものだ。お前にはまだ早い」

「えー! パパのケチー!」

 晴人はそのやり取りを見て、笑い声を上げた。

「二人とも、喧嘩しないの。レオ、後でブラッシングしてあげるからね」

「やったー!」

 子供は無邪気に歓声を上げる。

 風が吹き抜け、庭園の花々の香りを運んでくる。

 晴人は空を見上げた。かつては異質に感じた二つの太陽も、今では当たり前の風景として馴染んでいる。

「……幸せだな」

 ふと漏らした言葉に、レグルスが反応した。

「当たり前だ。俺が幸せにしているのだからな」

「はいはい、そうですね」

 晴人はレグルスの腕に頭を預けた。

 その腕は逞しく、温かい。

 異世界に召喚され、食べられそうになり、そして愛された。

 数奇な運命を辿ったトリマーは今、最強の獣人王の隣で、誰よりも穏やかな「陽だまり」の中にいた。

「さあ、帰ろう。今日はお前の好きなシチューを作らせている」

「やった。楽しみです」

 二人は寄り添い、城へと歩いていく。

 その背後には、長く伸びた二つの影と、小さな影が一つ、幸せそうに揺れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

陽だまりの檻、獅子のキス。~愛玩動物として召喚された俺と不眠症の獣人王~ 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ