第12話「王妃の誕生と朝の光」
翌朝、晴人が目を覚ますと、体は重いが、気分は驚くほど爽快だった。
隣を見ると、レグルスが頬杖をついてこちらを見つめていた。その表情は、今までのどの時よりも穏やかで、そして甘い。
「おはよう、俺の番(つがい)」
レグルスが口づけを落とす。
「……おはようございます、レグルス様」
晴人は顔を赤くして挨拶を返した。首筋に触れると、そこには昨夜の噛み痕がくっきりと残っていた。もう痛くはないが、触れるだけでレグルスとの繋がりを感じて胸が温かくなる。
「さて、行くぞ」
「え? どこへ?」
「決まっている。朝議だ。お前を正式に紹介する」
レグルスは有無を言わせず、晴人に最高級の正装を着せ始めた。それは愛玩動物のものではなく、王族が身につけるための衣装だった。
「ち、ちょっと待ってください! こんなの着て出たら、みんな腰を抜かしますよ!」
「腰を抜かさせておけ。俺が選んだ伴侶だ。文句のある奴は噛み砕く」
レグルスは晴人を軽々と抱き上げると(いわゆるお姫様抱っこだ)、そのまま玉座の間へと向かった。
玉座の間には、宰相ガロンをはじめ、重鎮たちが勢揃いしていた。
王が現れると同時に平伏する彼らの前を、レグルスは堂々と歩いていく。
「面を上げよ」
王の声が響く。
全員が顔を上げ、そして息を飲んだ。
王の腕の中には、人間の晴人が抱かれている。しかも、王族の衣装を身に纏い、その首筋には王による「番」の印が刻まれているのだ。
「紹介する。これが俺の伴侶、ハルトだ。今日からこの国の『王妃』となる」
静寂。
あまりの衝撃に、誰も声が出せない。
最初に反応したのは、やはりガロンだった。
「へ、陛下……正気ですか!? 人間を、しかも愛玩動物を王妃になど……!」
「不満か?」
レグルスが鋭い視線を向ける。
「ハルトは、暴走しかけた俺を鎮め、救った。その力は、お前たちも知っているはずだ。それとも何か? お前たちは俺の鬣をあそこまでフワフワにできるのか?」
「そ、それは……」
ガロンは言葉に詰まった。あの神がかったマッサージ技術と、王の機嫌を劇的に良くする効果は、誰もが認めざるを得ない事実だ。
「ハルトは俺の魂の半身だ。異論は認めん」
レグルスの断言に、場内の空気が変わった。
王がここまで言い切るなら、従うしかない。それに、晴人から漂う王の匂いは、彼がすでに王の庇護下にあることを強力に主張していた。
「……承知いたしました。ハルト様を、王妃としてお迎えします」
ガロンが深く頭を下げると、他の者たちも一斉にそれに続いた。
晴人は驚き戸惑いながらも、レグルスの腕の中で小さく会釈をした。
こうして、異世界初の「人間王妃」が誕生したのだった。
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