封印具が提供されるらしい
「これは……」
白衣を着た研究者たちが十個ほどの武器を台車に乗せて運ぶ。
「封印具と呼ばれる特殊武器です。これらの武器には力が封印されており、それぞれ特殊な力を発揮します」
剣や槍、斧といった多種多様な武器がある。
その中の一つに見覚えのある武器があった。
屋敷で鬼のヌシを縛っていた鎖だ。
「例えば、この盾には持ち主の致命傷を一度肩代わりするという能力があります。使い捨てですけどね」
武器の中から小さめの盾を持ち上げる。
それに反応したのは白井だった。
「そ、それ欲しいです!」
「他にこの盾を希望する人はいませんか? ……いないようなので、白井奈緒さんには盾を提供します」
「あ、ありがとうございます」
大封印の危険度がAだと知ってから白井はオロオロしている。神社で自信満々だった姿からは想像できない。
「邪神竜はこの杖を希望する! 術を使えるのはこの邪神竜のみだからな!」
「了解しました。どうぞ」
邪神竜は意外と試練を考えての選択だった。
かっこいいからと鎖を選ぶと思ったのに、予想が外れた。
だけど、俺と白井は遠距離攻撃ができないから結構助かる。
「それなら、俺はこの鎖をもらいます」
正直、素手でも戦えるから武器はどれでも良い。俺には再生能力があるから死にはしないはずだ。
「これを選びますか……」
珍しく志喜屋が顔を歪める。
そんなに不味い選択だったのか。
「やめた方がいいですか?」
「いえ、そういう訳じゃないんです。この鎖はかなり強い部類の封印具です。なんでも大昔に当時の名門当主が使っていたとか。その当主が大封印の中で死亡したと共に行方不明になっていましたが、最近また見つかって話題になりました。しかし、その、呪われているみたいで……」
「なるほど」
つまり、廃棄処分のような感じで入社試験の武器貸し出しに回されたのだ。
呪われた武器を入社試験の選択肢に入れるなと言いたいが、入社前の一般人の扱いなんてこんな物だ。バイトで散々思い知った。
まあ、試験で死んでしまっては武器の回収に手間がかかるし、強力な武器は持たせられないのだろう。
とても合理的な判断だ。
気持ちの問題を切り離せたらの話だけど。
やはりムカつくものはムカつく。
封印師は一般人の命をそこら辺に転がっている石と同等だと思っている節がある。
屋敷の時に出会った老人なんて、躊躇いもなく攻撃して来た。
頭おかしいだろ。
俺はまだ忘れてないからな。
「武器の変更はありませんね? 時間がないので早速試験について説明します。試験内容は至って簡単、五分間大封印の中で生き残ることです。怪異を倒す必要はありません。入り口のすぐ近くで五分間隠れていても良いです。方法は問いません。とにかく、五分間大封印の中で生き残れることを証明してください。質問はありますか?」
誰も手を挙げない。
シンプルすぎる内容だからだ。
五分間生き残るだけ。
しかも手段は問わない。
最後の最後に、一番単純で難しそうな試験が来た。
この試験の採点は1か0だろう。
生き残れば1。死んだら0。
それも、五分間というごく短い時間だ。
それほど生き残るのが難しいのだと考えることができる。
「質問はないですね。それでは、三人にタイマーを渡します。このタイマーは大封印に入ってから五分間経てば教えてくれるので、落とさず有効に活用してください。私からは以上です。試験、頑張ってください」
志喜屋はいつものように頭を下げる。
俺たちは顔を合わせた。
「同時に入ろう。タイマーに個人差があると面倒くさい」
それぞれにタイマーがあるということは各々入ったタイミングで計測が開始されるのだろう。
他の二人は終わったのに、一人が終わってない。そんな状態で怪異に襲われたら判断が難しい。
置いて行くのは嫌だけど、かといって強力な怪異と戦って全滅、なんて結末は誰も望んでいない。
それなら、全員が同じタイミングで五分間の計測が始まる方がいい。
「邪神竜は下僕の意見に賛成しよう。大封印は入り口で待ち伏せされないように対策されていると聞いた。入った直後に危険はないだろう」
「私も糸瀬くんに賛成。少しでも生存率は上げないと」
全員の意見がまとまり、同じタイミングで入ることになった。
正直待ち伏せが怖いけど、どうせ誰かは待ち伏せの餌食になるんだ。それなら、全員で対処した方がいい。
「それじゃあ、行くぞ。せーの——」
黒い渦に足を踏み入れる。
透明な膜を破った感覚があった。
屋敷や神社に入った時とはまた少し違う。
しかし、世界が変わったと実感は持てた。
最初に目に入ったのは赤色。
空も地面も赤く染まっている。
そして、竜を見る。
赤い竜だ。
邪神竜なんていう厨二病による空想の存在ではなく、圧倒的な存在感。遠くからでも生物としての格の違いを感じた。
ここは地獄だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます