エルフヒーラー

マナは使えば使うほど枯渇するというのはどの世界でも常識だが、ここまで初期値が低いとは。あのレベルで魔王戦で最初にダウンしてしまっていたのにも納得がいく。純粋な魔術師と違って中途半端なのでMPがもうない、というあの言葉の意味が理屈ではなく、体で理解できた。これは辛い。MPの成長ボーナスもほぼ無いわけだから、純粋なレベルがものを言う。実際、さっきのシルバースライムを倒してレベルが1上がったがMPではなく魔法と防御にステータスが割り振られた。

 軽い魔法攻撃と魔盾スキルが中心のスペルガーディアンの使われない理由をまたこうやって知ることになってしまうとは。そもそも、こんなMMOの世界に転生して役職すら自由に選べないのもどうかと思うが、転生できただけまだマシと考えた方が幸せだろう。

 そんなどうでもいい考えごとをした後で疲れ切って眠ってしまい30分。やっとMPは5まで回復し、歩けるようになった。まだ元気いっぱいで歩ける感じでなく、フラフラと歩けるような状態なのが不便すぎるが。とにかく、まずはシルバースライムのドロップ品を確認するところからだ。倒した直後の魔力切れで経験値だけしかもらっていない。宝箱の蓋がつかんだ手を通じてカタカタと揺れて崩れそうな音を出しながら開いていく。中には少しだけ丈夫になったような見た目のロッド。少なくとも木製ではないので今持っているものよりは壊れにくいだろう。内容を見てみると、『MP消費軽減微』という少しだけ役にたつスキルもちゃんと付いていた。とはいえ、全ての詠唱の時、消費MPを低確率で1減らすというハズレに限りなく近い装備効果だ。もっとこう、全ての詠唱1ヘラスとかでも良かったのに。将来的にいらなくなるとしても、今は1だけでも確定で減ることがとてもありがたいのだから。


「まぁ、嘆いたって仕方がないよなぁ」

 宝箱を開けた後で、また座り込む。まだ足や手がガクガクする。魔力の枯渇は転生前の世界で言えば何も食事をとっていないのと同じだ。なんとかして魔力を確保しなくてはならない。アリサは時折チームにいたクラフターから魔符のようなものを作ってもらって回復していたっけ。でも、そんなやつもいるわけないしこの今つけているペンダントのいいものを探すしかなさそうだ。そうと決まればやることは1つ。ひたすら下の層を目指すしかない。噂によればこの経験値ダンジョン自体の隠しステージもあるとかなんとか、風の噂で聞いたことがあったのでそこを見つけられればもっと素晴らしい。

 ゆっくりと1歩ずつ進んでいく。サボっている時間は実はそこまで多くない。もし1巡目と同じような時間の流れ方なら、このダンジョンを最速でクリアするくらいの勢いで行かないと最下層までは辿り着かない。隠しステージも行くとしたらもっと早いペースで攻略していかなくてはならない。MP問題は早めにどうにかしなくては。


 ゆっくりと次の階層へと向かう階段を降りていく。手で壁を掴みながら降りていかないと。

「やっと気づいた。後ろにいるお前は誰だ?」

 ボロボロなのを隠すように少し重めの声で話す。少しの威嚇にはなるだろう。

「あ、はう……。悪気とかがある人でないんです……」

 弱々しい声が返ってきたことにびっくりしながらも僕は距離を保ったまま話を続ける。この世界ではこうやって油断させてPKプレイヤーキルをしてくる野蛮な人も1巡目でいるという噂をつかんでいる。どの世界でも性格の悪い人はいるものだ。

「遠距離からの支援はやったことないですけど、そ、それっ」

 シャキッと立てるようになった。見てみると、MPが全回復している。この段階で全回復というのを持っているのは相当優秀な人じゃないとできないことだ。素直に尊敬できる。

「え、えっと。そ、それではお気をつけて?」

 明らかに人と話すのに慣れていないような感じだが、持っているスキルは今の僕には必須級。回復をしてくれた時点で悪い人という印象は受けなかった。階段を戻り、気づけば呼びかけていた。エルフのような姿の少女は石像のようにこちらをじっと見ていた。

「さっきは、ありがとう。なんか、疑っているような雰囲気出してしまってすまない」

 まず出た言葉は謝罪。それはそうだ。あれだけよくしてくれた人に対してあんな態度をとったのだ。

「は、あ、い、いえ。こっちも、後ろ付いていくのは違うとは思ってても話しかけられなくて……」

 エルフの見た目の少女はそう言って頭を下げてくる。下げたいのはこっちなのに。見るからに役目を終えて、帰ろうとしているような感じだったので、僕は彼女にスカウトをしてみた。今の僕の現状、そしてこの先のこと。魔王のことも少し。僕が2周目なのはとりあえず言っていない。それで何か未来が変わったり、不利になるようなことが起こっても嫌だから。

「あ、はぅ、わ、私でいいならぜひ……?」

 エルフの少女はそう弱々しい声で返事をしてくれた。声は弱々しいとしても、僕からしたらものすごい助っ人だ。


――――

久しぶりに異世界ものを書いています。ぽてぃです。もし、誤字脱字があればコメントなどで報告してくださるとありがたいです。


カクヨムコンに間に合うかはわかりませんが、毎日投稿して行こうと思いますので、いいねや星で応援よろしくお願いします。




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