認知と事象の違い

「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!」

 みなさん、転生先でギルドの前で賭け事に負けた後の全てを失った人のように喚いている人がいたらそれは僕ですと先に言っておきます。

 世界のリセットがかかってからすぐにギルドに行ってスキル鑑定をしてもらった。時間が戻ったような描写が見えたのだ。スキルを書き換えられて負けたという事実がなくなって元の最強スキルが戻ってきている可能性をまだ残していたからだ。けれど、現実は非情。何も変わっちゃいない。

 スペルガーディアンについてはある程度、元同じチームだったアリサのやってきたことを見てきたから分かる。役職ガチャはなんとか耐え、スキルガチャを大外れ引いたという感じ。まぁ、つまり総合的には大負けだ。いや、やっぱりギャンブルだったのかもしれない。全ての原因は恐らくあのダイスだったし。


 いつまで落ち込んでいるんだとそろそろ誰かに言われそうだが、あまりにもショックで騒ぎすぎたためか、変な人をみるような目で周りは僕を見てくる。誰も声なんてかけてこない。突如、大量の針に刺された僕はその場をサッと離れた。


「さて、どうするかだな……」

前程の攻撃はできないにしてもスペルガーディアンは中級役職。守りと詠唱を両方できる優れものだが、条件などが面倒くさく上級役職にも踏み込めないある意味使い手がいないに等しいスキルだと思う。実際、冒険で色々な人に会ったのにアリサ以外で見たことがないのが一番の理由だろう。

 そこで思い出す。1巡目では出遅れてしまった経験値ダンジョン。この街のものすごい外れにいるNPCに話しかけて『炭鉱夫の悩み事』というクエストを受注し、クリアした後で解放されるダンジョンで、僕たちは気づく前に遠征に出発しており、急いで戻った頃にはもう経験値を手に入れられるような余裕は進行度的になかった。あの時の僕には必要なかっただが、他のメンバーはそうではない。そして、今では僕も必要としている状況。

 何より、街で僕みたいに混乱している人がいないことから他の人は1巡目の記憶を引き継いでいない。ならば、スタートダッシュは僕のものだ。

 村の外に出ようとすると、呼び止められる。そうだ、NPCの幼馴染と模擬戦をしなければいけないのだった。幼馴染の名前はケリィ。NPCなだけあって、プレイヤーとは真逆の役職についていることが多く、その役職はランダムで選出される。

「おーい、待ってよ〜!」

 ケリィが街の方から走ってくる。この後に役職のカミングアウトとも言えるメッセージが出て来るところまでは覚えている。

「この騎士のケリィちゃんを置いていくなんて、ひどいじゃん!」

 今回は騎士だった。前回はパラディーンという守っているだけの役職だったので、斬って終わったが、今回はこっちが守る側になるだろう。

「お互いに冒険へ出る前に模擬戦やろうって言ってたじゃん! だから、今、ここでやるよ!」

 相変わらずメチャクチャだ。けれど、これは勝ち確イベントでもあるのでサクッと終わらせたい。それに、この後のイベントで何かしら答え合わせはできるだろうし。


 NPCのケリィの動きは単調だ。突っ込んできて、攻撃をするだけ。相手に一発でも攻撃があたればバトルが終了して、イベントが発生する仕組みに1巡目はなっていた。スペルガーディアンならすぐに終わる。なぜなら、攻撃をされた時点で反撃が発動するからだ。回避行動も取らないので、サクッと終わる。


 そして、街が暗雲に包み込まれる。ヤツが現れる。

「調子はどうだい、元勇者様。ガハハ!」

 やっぱりな、そういうメタいこと言って来ると思ってたよ。魔王がケリィを攫いに来るイベント。これは確定で起こる。

「調子も何も、どうやってお前をぶっ倒すか今考えてたところだよ!」

 1巡目となんら変わらないヤツの顔に少しむしゃくしゃしてきた。今ここで殴ってやりたいが、負けるのは確実なのでグッと堪えた。今は役職が勇者ではないのだ。攻撃が通ったあの時とは違う。


「そうかそうか、それはご苦労だなっ!」

 そう言いながら、魔王はケリィの体をデコピンで消し飛ばした。


「…………は? 何しやがる!」

 予想外の行動に、僕はそれしか声が出ない。普通に考えてあり得ない。魔王もNPCの一種のはずだ。少しだけ他より強化がかかっていたとしても、NPCのはずだ。中身は転生者とかそっちの類だというのか?そんなはずはない。魔王は僕が一緒に冒険したネームドNPCとかと同じなはずだ。混乱している間に、暗雲が晴れていく。魔王はすでに逃げようとしているのだ。


「それじゃあ、前みたいにあそこで待ってるからな。ガハハ!」

「おい、待てコラ!」

 僕が振った盾は宙を空振り、ガンと地面で鈍い音を立てる。

 何かがおかしい。魔王は確実に何かを企んでいる。ストーリすらもねじ曲げるなんてことは普通はあり得ないのだから。まさか、魔王はNPCのフリをしている転生者、だというのか。もしそうだとしたら、僕の色々なスキルに関しての知識があったことも納得がいく。寒気がしてきた。


――――

久しぶりに異世界ものを書いています。ぽてぃです。もし、誤字脱字があればコメントなどで報告してくださるとありがたいです。

今日2本目、ですね。

今日からカクヨムコンに間に合うかはわかりませんが、毎日投稿して行こうと思いますので、いいねや星で応援よろしくお願いします。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る