第2話
亜香里は翔と同じ中学校に通った。1年生の時に同じクラスになった。
中学校生活が始まると同時に、父親の仕事の都合で遠くに引っ越すことになったので
周りには知っている人は誰もいなかった。他の生徒は小学校からの知り合いも多いらしく、初日からグループを作っている生徒が多かった。
そうして入学後、しばらく会話する人が誰も出来ずに悩んでいた亜香里に最初に声を
かけてくれたのが、翔だった。
体育の授業で自由時間になった時、誰も遊ぶ人がいなくて一人俯いて来た時、彼は
声をかけてくれた。
「よかったら一緒にバトミントンをしない?」
そう言われた時は本当に嬉しかった。彼はまるで天使のように明るい笑顔を私に向けながら、ラケットを持って私に話しかけてくれた。
「行こう」
彼はとても優しい人だった。それからも昼休みの時間や休憩時間などに沢山私に話しかけてくれた。また別の時には忘れ物を私に貸してくれたり、給食で食べきれない分を代わりに食べてくれたりもした。
そうこうしているうちに彼と私はあっという間に仲良しになった。
入学してから1ヵ月が経つ頃には、一緒に登下校するようにまでなっていた。
ある時彼にこんな質問をしてみた。
「ねえ、どうして私に話しかけてくれたの?」
「ん?」
「だって翔君は顔も良いし、運動も出来るんだから私なんかと仲良くしなくても
友達は沢山出来るでしょう?」
「いやーそれほどでもー、確かにそうかもね」
「む!」
「はは、怒らないでって! 冗談だよ、冗談
話しかけた理由かー、 うーん
でも亜香里ちゃんには何だろうな・・・ なんか感じたんだよね」
「何かって何を?」
「何か、、、、、、、運命的なものを」
「運命!」
「理屈では説明できないんだけどね・・・何かこう他の女の子には感じない
気持ちを君に対しては感じたんだよね
って!こんなこと言わせないでよ!恥ずかしいじゃん!」
こう言われてしまってはもう後がない。それを聞いた瞬間、私は彼に特別な
気持ちを抱いてしまった。家に帰ってから母親にそのことを相談した。
そうしたらまるで私が最高の親孝行をしたかのような調子で喜んでくれた。
「とうとう亜香里にも好きな人が出来たのね!
お母さん、とーっても嬉しい。あなたが生まれた時と同じくらい嬉しい」
「え、人を好きになるってこういうことなの?」
恋心というものを経験したことのない亜香里にとってそこは未知の領域だった。
「そうよー!女の子にとって男の子に恋をする瞬間っていうのは
人生でもっとも素敵な瞬間といってもいいくらいのものなのよ。
ああー!亜香里もついに恋を知ったのね!
今夜は特別に高級寿司屋さんに連れてってあげるわー」
「そ、そこまでしなくていいよ」
亜香里はそう言いながら内心喜んでいた。やった、自分も恋を体験できたのだ、と思った。小学生の頃周りの同級生の女の子が次々と気になる男の子の話しをしてくる中で、自分は全くその流れに乗れなかった。気持ち悪いとしか思っていなかった。
彼らの話しを聞いても、こいつらのどこにそんな好きになる要素があるの?と疑問に
思ってばかりだった。
それと同時に恐れ始めていた。自分は誰のことも好きになれないんじゃないかと。
元々同級生だけでなく、家族にもそれほど関心のなかった亜香里は人間関係に喜びを
見出すことが出来ないのではないか?と恐れ始めていた。
周りの人はみんな好きな人を見つけていくのに、自分は・・・
そんな不安が常に頭の中によぎっていた。
だからこそ今回の出来事は彼女にとって特別だったのだ。
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