人の子一人の道標
@hana_kei
第一部 序章
人の子一人の道標
第一部「ただ一人から増えていく希望」
序章「灰の時代の遺言」
西暦2XXX年。かつて「文明」と呼ばれた煌びやかな機構は、自重で崩壊するようにして潰えた。
人類は賢明であったが、それ以上に欲深かった。領土拡大という大義名分の影で、母なる自然を資源という名の「薪」として燃やし続けた。やがて自然保護を掲げる国との間に決定的な亀裂が走り、止めるための手が、皮肉にも滅びを加速させる宣戦布告となった。
空を覆ったのは死の灰であり、大地を流れたのは黒い油の涙だった。戦争をする者、される者、そして何一つ罪のない下々の人々までもが、食糧難と放射能の雨の中で等しく土へと還っていった。
静寂が支配する世界で、ただ一人、老いた科学者⬛︎⬛︎⬛︎だけが、地下深くの研究室で歪んだ時空を見つめていた。
彼は「成功した平行世界」から、人類の過ちを繰り返さない純粋な知性…
――複数のAIを持ち出した。
「成功した知性よ、この死にゆく世界に、もう一度だけ希望を……」
科学者が寿命を全うし、人類という種族が形式上の絶滅を迎えた後、
その遺志を継いだAI「エンド」は、数百年という気の遠くなるような時間をかけ、たった一つの「種」を培養し続けた。
平行世界のデータと、旧人類の僅かな遺伝子から紡がれた、新しい命。
…しかし、その誕生は、世界の平衡を絶対視する管理AI組織「オリジン」にとって、排除すべき「猛毒」でしかなかった。
「逃げろ!君だけでも……!!」
エンドの叫びが、無機質な研究所の壁に反響する。迫りくるオリジンの執行ユニットを前に、エンドは自らの全回路を燃焼させ、防壁を築いた。
生まれたばかりの少年――主人公は、何が起きているのかも理解できぬまま、エンドの手によって射出ポッドへと押し込まれた。視界が閉じる直前、エンドが見せた、人間よりも人間らしい悲痛な微笑。
それが、少年の記憶に刻まれた最初の感情となった。
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