見つけた未来
リハビリを通して見つけた未来
夏の大会から数週間が過ぎた。エースは毎日リハビリ室で汗を流す日々を続けていた。手の力で車椅子を操作し、片手で軽いボールを投げる練習も始めた。以前は「野球はもうできない」と思っていたが、今では小さな進歩が希望に変わっていくのを感じていた。
ある日、理学療法士が言った。
「君、ずいぶん腕が強くなったね。もう少しで、片手でボールを投げられるようになるかも」
その言葉に、胸がわずかに高鳴る。事故前には当たり前だったことが、今では努力の結果として手に入る。小さな勝利の積み重ねが、自信となって心を満たす。
リハビリが終わり、帰り道。彼女と並んで車椅子を押してもらいながら話す。
「ねえ、最近ずっと考えてたんだけど……将来、俺にしかできないことを見つけたいと思うんだ」
彼女は興味深そうに顔を傾ける。
「どんなこと?」
「野球はもうマウンドには立てない。でも、戦略や指導ならできる。リハビリで学んだことや、事故を経験してわかったことを活かして、チームや子どもたちに野球を教える仕事をしたい」
彼女の目が輝く。
「素敵……あなたなら絶対にできるよ」
その言葉に、心が軽くなる。夢を語れる相手がそばにいることが、これほど勇気をくれるとは思わなかった。
さらに話は自然に二人の関係へと向かう。彼女は少し照れくさそうに、でも真剣な目で言った。
「私も、あなたと一緒に頑張りたい。あなたの夢を支えたい」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。事故で失ったものは大きかった。しかし、支えてくれる人がいる今、未来に向かって前に進む力を手に入れた。
数か月後、彼は学校の野球部の練習だけでなく、地域の少年野球教室に参加するようになった。車椅子のままでも、子どもたちにボールの投げ方や戦略を教える彼の目は、生き生きと輝いていた。
そして彼女も、エースと共に笑い、支え合う毎日を楽しんでいた。互いに手を取り合いながら、二人の未来は少しずつ形を作っていく。事故で変わった日常は、希望と夢、そして愛に満ちた新しい世界へと広がっていった。
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