葛藤、そして恋

部活との関わり、葛藤、そして恋

リハビリを重ねてから数週間が経った。初めは手探りだった車椅子の操作も、今では廊下を自力で移動できるまでになった。だが、心の奥にはまだ大きな穴が開いたままだった。

野球部の練習に顔を出す決心をした日。グラウンドに立つと、太陽の光がまぶしく、元気にボールを追う仲間たちの姿があった。彼らの笑い声に、自分の存在が邪魔になってしまうのではないかという不安が押し寄せる。

キャプテンが近づいてきて言った。

「……無理するなよ。お前のペースでいいんだ」

その言葉に少し救われる。しかし、エースとしてチームを引っ張ってきた自分は、ただ見守るだけの存在であることに苛立ちも覚えた。腕が自然と力んで、握りこぶしを作る。

その時、彼女――リハビリを手伝ってくれた同級生がそっと近づき、手を差し伸べた。

「見てるだけでも、チームの力になるんだよ。私も応援してる」

その言葉に、胸が熱くなる。支えてくれる人がいる――それだけで、不安が少しずつ和らぐ感覚があった。目が合った瞬間、彼女が少し頬を赤らめたように見え、心臓が跳ねた。

リハビリ室では、理学療法士が新しい課題を出してくれた。手すりを使って立ち上がる練習、車椅子で坂道を登る練習、そして片手で操作しながら小さな物を拾う訓練。

最初は思うようにできず、何度も倒れそうになった。しかし、彼女が隣で励ましてくれる。キャプテンも練習後に訪れ、時には軽く声をかけてくれる。

「俺たち、ちゃんと待ってるから」

その言葉に、エースは小さく笑った。野球をやめるわけではない。形は変わるかもしれないが、自分はまだチームの一員でいられる。

そしてある日の夕方、練習後に二人きりになったとき、彼女がそっと手を握って言った。

「私……ずっと、応援してたんだよ。あなたのこと」

胸がぎゅっと締め付けられる。返事をしようとしたが、言葉が出ない。事故前の自分なら、こんな感情に戸惑うこともなかったのに。今は、悔しさも喜びも混ざり合い、胸の奥で大きな渦を作る。

その夜、ベッドに横たわりながら、今日一日のことを思い返す。車椅子でグラウンドに立った自分、仲間の笑顔、そして彼女の手の温もり。

「まだ、前に進める――きっと」

事故から始まった新しい日常は、希望と葛藤、そして少しの恋心で彩られていた。これからのリハビリ、チームとの関わり、そして彼女との関係――すべてが、自分を少しずつ強くしていくのだと、彼は確信していた。

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