リハビリと支え

最初のリハビリと支え

翌朝、病室に差し込む光が昨日より少し明るく感じられた。だが、胸の奥の重さは消えていない。車椅子に座ることさえ、まだぎこちなく、手に汗がにじむ。

「今日は少しだけ、自分で動かしてみましょうか」

理学療法士の優しい声が響く。ベッドから車椅子へ移る。体の感覚が思うように動かず、何度も手で体を支え直す。

「ゆっくりでいいですよ。焦らなくていい」

その声に励まされながらも、心は苛立ちでいっぱいだ。野球部で全力を尽くしてきた自分にとって、この“少しずつ”の動作は耐えがたいほどもどかしい。

その時、病室の扉が静かに開き、彼女が入ってきた。クラスの同級生で、ひそかに気にかけていた女子だった。彼女はにっこりと笑い、言った。

「手伝うよ。絶対、できるから」

その笑顔だけで、胸にぽっと温かさが広がる。手を取り、彼女の支えで車椅子を少し前に動かす。ぎこちない動きだが、確かに自分の力で進んでいる感覚があった。

「……動いた」

小さな声だったが、久しぶりに自分の力で成し遂げた感覚だった。彼女は嬉しそうに拍手をしてくれる。その笑顔が、重く沈んでいた心に光を差し込む。

「焦らなくていいんだよ。昨日できなかったことが、今日はできる。明日はもっとできるかもしれない」

その言葉を聞きながら、エースは少しだけ笑った。野球のピッチングのように、一度に全力は出せなくても、少しずつ前に進むことが大切なのだと、ようやく理解できた。

夕方、病室に野球部のキャプテンが再び訪れる。無言で車椅子の横に座り、軽く肩を叩く。

「……俺たち、ちゃんと待ってるから」

その言葉だけで、胸が熱くなる。事故前の自分と、今の自分――どちらも自分だということを、少しずつ受け入れられそうな気がした。

リハビリの最後に、彼は小さくつぶやく。

「……まだ、終わったわけじゃない」

そして彼女とキャプテンの二人がそっと微笑む。彼の新しい日常は、ここから始まるのだった。

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