僕らのエースは車椅子

真田直樹

まさかの事故

事故後の最初の1日

痛みで目が覚める。頭の奥がズキズキと脈打ち、体の感覚がいつもと違うことにすぐ気づいた。目を開けると、天井に白い蛍光灯が光っている。自分の体が、思ったように動かない――下半身がまるで自分のものではないみたいに感じられた。

「……俺、どうなったんだ?」

声を出そうとしたが、喉の奥で引っかかる。誰かがそっと手を握る感触に気づき、横を見ると母が涙ぐんだ顔で立っていた。

「……大丈夫、命は助かったのよ」

その声を聞いた瞬間、安心よりも重苦しい現実が胸にのしかかる。野球部の仲間と一緒に戦ってきたあの日々、グラウンドで笑っていた自分、マウンドで全力で投げていた自分……すべてが遠い夢のように思えた。

病室に医師が入ってきた。冷静な表情で説明される。

「事故で脊髄を損傷しました。残念ですが、下半身に麻痺が残る可能性があります」

言葉は淡々としていたが、心に落ちる衝撃は言葉以上に重かった。エースである自分が、野球をもうできないかもしれない――そんな現実を、受け入れることができなかった。

リハビリのスケジュールが説明される。最初は簡単な座位の練習、少しずつ自力で車椅子を動かす訓練。母が支えてくれるが、何度も転びそうになり、悔しさと苛立ちで涙がこぼれた。

「俺は……俺は、野球が……」

言葉にならない思いを押し込める。母はただ黙って頷き、そっと背中をさすった。部屋の窓から差し込む光が、わずかに温かかった。希望の光なのか、それとも無情な現実をやわらげるだけのものなのか、まだわからなかった。

夕方、病室にクラスメイトの姿が見えた。野球部のキャプテンだった。無言で座り、肩をぽんと叩く。言葉はなくても、彼の目に映る驚きと戸惑い、そして支えたい気持ちが伝わった。

事故からまだ数時間――世界は変わった。だが、この日、最初の一歩を踏み出したのは確かだった。動かない下半身、震える手、そして胸に渦巻く不安と悔しさ。そのすべてを抱えながら、彼は小さな決意を胸に秘めた。

「……まだ、終わったわけじゃない」

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