転生色欲(生まれ変わってもスケベ)

転生して、はや12年が経った。


この世界での故郷は、パラクプテイン村という長閑のどかな農村だ。

剣も魔法もあるファンタジー世界のはずなのに、村の周りには危険な魔獣も出ず、迷宮の噂すら聞こえてこない。

冒険者が寄り付かない土地柄だから、来るのは行商人と税を集めにくる役人くらい。

まさに「平和すぎる田舎」そのものだった。


粕谷流星だった俺は、奇しくもリューセーと名付けられ、普通の農家の次男坊として暮らしている。

日の出と共に起きて畑仕事を手伝い、わずかな自由時間には山で野苺を摘んだり、川で錦鱒にしきマス翔兎ジャンピングラビットを捕まえて小遣い稼ぎをする日々。

それか──


「おーい、リューセー! 遊びに行くよー!」


元気いっぱいの声が響いた。


木こりの娘、フレアだ。

山仕事で鍛えられた体は同い年とは思えないほど発育が良く、栄養が全部筋肉と胸に行ってるタイプ。

いわゆる体育会系脳筋少女。

一方で、村長の娘ノアは真逆だ。

色白で背が低め、農村では珍しく文字が読めて、いつも本に埋もれている本の虫。

フレアが無理やり外に連れ出さない限り、家から出てこない。


今日も3人で川辺にやってきた。

真夏の陽射しが照りつける中、冷たい川の水は最高に気持ちいい。

水遊びをしていると、フレアの濡れたシャツが体に張り付いて……

眼福だな、と前世の悪い癖が顔を覗かせる。


ひとしきり遊んで、川辺の岩に腰掛けて小休止。

フレアが突然、目を輝かせて言った。


「来年の今頃、楽しみだねー!」


「ん? 何の話?」


「祝福の儀」

ノアが静かに補足した。


祝福の儀。

大教会で祈りを捧げると、神のによって「職業適性」が明らかになる儀式だ。

この国では、才ある若者を見極めるため、ほぼ義務のように行われている。

大抵の人は「大工」「農夫」「商人」みたいな平凡な職業が出て、教会から「好きに生きなさい」と追い出されるらしい。


「でもさ、アイギス領キトンまで馬車で3日かかるんだよ!

楽しみー! 美味しい食べ物いっぱいあるかな?」


「フレアは食いしん坊だな……」


「私は、才のある職業が出たら嬉しい。

奨学金が出て、学校に通える。本、たくさん読める」


「ノアは勉強熱心だな」


楽しい夢の話、フレアが急に俺の方を向いた。


「ねぇ、リューセーはどうしたい?」


「……俺?」


世界を旅できそうな職業だったらいいな、と思った。

剣も魔法もある世界で、冒険しないなんてもったいないだろ。

非業の死を遂げた俺にとって、この世界はまさに「やり直し」のチャンスなんだから。


「リューセーは物作りが上手だから、錬金術師かも」

ノアがつぶやくように言う。


「確かに! リューセーって面白いもの作るよね!」

フレアも思い出したかのように同意する。

でもそれは、前世の知識ってやつだ。所詮は高校生レベルの浅知恵。


「そういえばさ、ルシカお姉ちゃんが2年くらい前に受けてきたよね!

話、聞きに行こうよ!」


フレアは思い立ったら即行動だ。

俺たちの手をぐいっと引っ張る。


「ちょっと待てって、フレア!」


結局、俺たちはルシカ姉ちゃんのお店に向かって走り出した。

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