第十八章 騎士の帰還
目を覚ましたとき、誠一は見慣れない天井を見上げていた。
白い漆喰の天井。柔らかな光が差し込む窓。清潔なシーツの感触。
「ここは……」
「王城の医務室だ」
声が聞こえた。
横を向くと、ガルバスが椅子に座っていた。
「隊長……」
「目が覚めたか。三日も寝ていたぞ」
「三日?」
誠一は驚いて起き上がろうとした。しかし、全身が軋むように痛んだ。
「無理するな。お前は重傷だったんだ」
「重傷……」
「腕の傷が深かった。加えて、極度の疲労と精神的な消耗。治療師が言うには、『よく生きていた』そうだ」
誠一は自分の腕を見た。包帯がきつく巻かれている。
「王都は……」
「落ち着け。すべて終わった」
ガルバスは安心させるように言った。
「騎士団が魔族を撃退した。城門は奪還され、街は復興に向かっている。市民の死者は——」
「何人だ」
「……百三十七人」
誠一は顔をしかめた。
「百三十七人……」
「少ない方だ」
ガルバスは言った。
「当初の推定では、千人以上の犠牲が出ると予想されていた。それがこれだけで済んだのは——お前のおかげだ」
「俺の——」
「お前が城門の警戒を強化していなければ、もっと多くの門が突破されていた。お前が群衆を誘導しなければ、中央広場だけで数百人が死んでいた」
ガルバスは立ち上がり、誠一の枕元に来た。
「誠一、お前は王都を救ったんだ」
誠一は何も言えなかった。
百三十七人。救えなかった命。
しかし——救えた命もある。
それを、どう受け止めればいいのか。
「……みんなは」
「無事だ。隊員は全員生きている。怪我人はいるが、命に別状はない」
「エルナは」
「あいつも無事だ。今頃、南門の警備についている」
「そうか……」
誠一は安堵の息をついた。
「リーゼロッテは」
「彼女も無事だ。ただ、今は忙しいらしい。騎士団の事後処理で」
「そうか……」
誠一は目を閉じた。
みんな、無事だった。それだけで、十分だ。
「ゆっくり休め」
ガルバスが言った。
「お前には、まだやることがある。体を治してから、復帰しろ」
「はい……」
誠一は意識を手放した。
* * *
翌日、見舞い客が訪れた。
「誠一さん!」
エルナが飛び込んできた。
「大丈夫ですか! 目が覚めたって聞いて!」
「ああ、大丈夫だ」
誠一は微笑んだ。
エルナの顔には、安堵と心配が入り混じっていた。
「心配かけたな」
「当たり前です! 三日も目を覚まさないから……もうダメかと思いました」
「大げさだ。俺はそう簡単に死なない」
「死なないでくださいよ……」
エルナの目に涙が浮かんだ。
「お前も、よく頑張ったな」
「私は……何もできませんでした……」
「そんなことはない。南門を守り続けたと聞いた。避難民の対応も、完璧だったそうだ」
「でも、誠一さんみたいに——」
「俺と同じことをする必要はない」
誠一はエルナの頭を撫でた。
「お前には、お前のやり方がある。それでいいんだ」
エルナは涙を拭きながら、頷いた。
その後、他の隊員たちも次々と見舞いに来た。
ゴルドは大きな果物かごを持ってきた。
「見舞いの品だ。受け取れ」
「ありがとう」
「礼はいい。俺の方こそ、礼を言わなきゃならん」
ゴルドは腕を組んだ。
「お前のおかげで、俺も生き延びた。お前がいなかったら、東門で死んでたな」
「俺が何をした」
「作戦を立てただろう。敵を誘い込んで、罠にかける。あれがなかったら、正面からぶつかって全滅してた」
誠一は首を横に振った。
「作戦を実行したのは、お前たちだ」
「お互い様だな」
ゴルドは笑った。
ジョルノとカルロ、ドルフも見舞いに来た。
「早く元気になれよ」
「隊がお前なしじゃ回らねえからな」
「……」(ドルフは無言で頷いた)
誠一は彼らの顔を見て、胸が熱くなった。
仲間がいる。
一人では戦えない。しかし、仲間となら——
「ありがとう、みんな」
誠一は頭を下げた。
* * *
数日後、特別な見舞い客が訪れた。
「失礼します」
扉が開き、リーゼロッテが入ってきた。
しかし、彼女の後ろには——
「殿下?」
王女アリシアが、リーゼロッテと共に入ってきた。
「お加減はいかがですか」
王女が微笑んだ。
誠一は慌てて起き上がろうとした。
「殿下、そのような場所に——」
「いいのです。私が来たかったのですから」
王女は誠一のベッドの横に座った。
「あなたのおかげで、私は助かりました。そして、王都も」
「私は——」
「謙遜しないでください」
王女は誠一の目を真っ直ぐに見た。
「あなたは、私の命を救ってくれました。そして、数百人の市民を守りました。それは、紛れもない事実です」
誠一は言葉を失った。
「父王も、あなたの功績を認めています。近いうちに、正式な叙勲があるでしょう」
「叙勲?」
「あなたを、何らかの形で報いたいと考えています」
誠一は首を横に振った。
「報いなど、必要ありません」
「なぜですか」
「私は、自分の仕事をしただけです。報酬を求めて動いたわけではありません」
王女は少し驚いた顔をした。そして、微笑んだ。
「あなたは、本当に変わった人ですね」
「よく言われます」
「褒め言葉です」
王女は立ち上がった。
「回復したら、また会いに来てください。あなたと話がしたいのです」
「光栄です」
誠一は頭を下げた。
王女は部屋を出ていった。
リーゼロッテが残った。
「大した出世だな」
「からかうな」
「からかってない。本気で言っている」
リーゼロッテは椅子に座った。
「お前は、本当に王都を救った。騎士団が帰還したとき、すでに大半の市民は避難を完了していた。お前の指示のおかげだ」
「俺一人の力じゃない」
「わかっている。だが、お前がいなければ、あの連携は生まれなかった」
リーゼロッテは窓の外を見た。
「ハインリッヒ副団長が、お前に会いたいと言っている」
「ハインリッヒが?」
「ああ。何か話があるらしい」
誠一は驚いた。ハインリッヒは、誠一のことを嫌っていたはずだ。
「何を話すつもりなんだ」
「さあな。だが——」
リーゼロッテは微笑んだ。
「悪い話ではないと思う」
* * *
翌日、ハインリッヒが医務室を訪れた。
「桐生誠一」
「副団長閣下」
誠一は起き上がり、頭を下げた。
ハインリッヒは椅子を引き、誠一の前に座った。
彼の顔には、複雑な表情が浮かんでいた。
「……一つ、謝らねばならないことがある」
「何をでしょうか」
「お前の警告を無視したことだ」
ハインリッヒは目を伏せた。
「お前は、魔王軍の内部工作を警告していた。城門が内側から開けられる可能性があると。俺はそれを妄想と切り捨てた」
「……」
「結果、お前の警告通りのことが起きた。東門と北門が内側から突破され、魔族が王都に侵入した。俺の判断ミスだ」
ハインリッヒは頭を下げた。
「すまなかった」
誠一は驚いた。ハインリッヒが頭を下げるなど、予想もしていなかった。
「副団長閣下、頭を上げてください」
「しかし——」
「過去のことを責めても、何も変わりません。大切なのは、これからどうするかです」
ハインリッヒは顔を上げた。
「……お前は、本当に変わった男だな」
「よく言われます」
「俺は——お前のことを誤解していた」
ハインリッヒは言った。
「警備員など、臆病者の仕事だと思っていた。戦えない者が就く、卑しい仕事だと」
「……」
「しかし、今回の件で考えが変わった。お前たちがいなければ、市民の被害はもっと大きかった。お前たちは——戦わずに、人を守った」
ハインリッヒは立ち上がった。
「これからは、お前の意見にも耳を傾けよう。警備員の視点は、騎士団にも必要だ」
「ありがとうございます」
誠一は頭を下げた。
ハインリッヒは部屋を出ていった。
誠一は窓の外を見た。
空は青く澄んでいた。
長い夜が明け、新しい朝が来ていた。
王都防衛戦は終わった。
しかし、誠一の戦いは、まだ終わっていなかった。
魔王軍は健在だ。また攻めてくるだろう。
そのときに備えて、守りを固めなければならない。
「異常なし」
誠一は呟いた。
「本日も、ご安全に」
その言葉は、いつしか彼の祈りになっていた。
"以下を参考に執筆を開始して。 著作権に配慮すること。 三分の一ずつ執筆しよう 10万文字以上の小説にすること。 小説の本文以外は出力しなくてよい。 現実の企業名、人名などは出さないこと 絶対条件①各章の文字数 文字数:5,500文字以上(これ以下は不可) 絶対条件② 出力前に文字数を内部でカウントし、不足なら加筆すること 計算論的ナラティブ・インテリジェンスによる長編小説生成:10万文字の壁を超えるための構造工学的アプローチとプロンプト設計1. 序論:AI共創による長編小説執筆の現状と課題1.1 背景:大規模言語モデルにおける長編生成の「コンテキストの壁」現代の人工知能、特に大規模言語モデ
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1月13日
Orchestrated narrative continuation across six novel chapters.
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