第20話 至高の都の誕生と公爵領の落日

アレンは領主邸の執務室の窓から、果てしなく続く馬車の列を眺めていた。 公爵家による経済封鎖が完全に崩壊した今、辺境の街へ向かう街道は、移住を希望する人々で埋め尽くされている。 執事が静かに運んできた紅茶には、深層ダンジョンでしか採取できない幻の青銀草の雫が加えられ、精神を研ぎ澄ます至高の香りを漂わせていた。


「アレン様、公爵領からの移住希望者が昨日だけで三千名を超えました。その中には、王都の武器屋や防具屋の熟練職人たちも多数含まれております。彼らは公爵家が課した理不尽な増税と、アレン様の特許管理による技術停滞に耐えかね、家族を連れて夜逃げ同然でここまでやってきたようです」


執事の報告に、アレンは静かに微笑んだ。 嫉妬と策略で自分を追放した公爵家は、今や自領の民からも見放され、その栄華は音を立てて崩れ去ろうとしている。 アレンは商業ギルドに対し、移住してきた職人たちに即座に仮の営業権を与え、彼らの技術を我が街の物流管理網に組み込むよう命じた。


午前中、アレンは新しく拡張された居住区の視察へと向かった。 街の境界線は、騎士団詰所と衛兵詰所の見事な連携によって、混乱なく守られている。 行商人たちの荷馬車は、王都の没落を裏付ける悲惨な情報と引き換えに、アレンの街で産み出された至高の物資を積み込んで再び各地へと散っていった。


昼時、アレンは新装開店したばかりの大型露店通りへと足を運んだ。 そこには、アレンが新たに創造魔法で定義したファンタジーの極致とも言える食材が並び、人々の胃袋を掴んで離さない。 屋台からは、雷龍の肉を贅沢に使った雷鳴串焼きや、魔力を回復させる効能を持つ星屑茸のクリームシチューの芳醇な香りが漂っている。


「領主様、本日の特製メニューをぜひ! 水晶大蟹の殻ごと蒸し料理に、灼熱鳥の卵を添えた黄金オムライスです。から揚げも今日は飛竜の軟骨を混ぜて、これまでにない食感に仕上げてありますよ」


露店商が誇らしげに、宝石のように輝く一皿を差し出した。 アレンはその場で一口運び、素材の生命力が創造魔法の定義によって最大限に引き出されていることを確認した。 冒険者たちは、訓練所の帰りに立ち寄り、屋台で買った氷精霊の涙で冷やした真珠苺のタルトや、黄金りんごのパイを頬張りながら、次なるダンジョン探索依頼の作戦を練っていた。


次に訪れた酒場では、肉持ち込みで調理を依頼した者たちが、深海魚のカルパッチョと大サソリの薬膳スープを囲んで祝杯を挙げていた。 エールやミードに加え、アレンが地底湖の冷気で熟成させた至高の蒸留酒が、彼らの疲れを瞬時に癒やしていく。 宿屋では、移住者たちが夕食に出された虹色豚のステーキと、太陽麦のふわふわパンの美味しさに、自らの選択が正しかったことを確信して涙を流していた。


午後、アレンは商業ギルドで近隣領主たちとの最終調印式に臨んだ。 公爵家を裏切り、アレンの庇護下に入ることを選んだ貴族たちは、アレンが提示した特許管理と物流管理の厳格な条件に、震える手でサインを書き込んだ。 もはやこの辺境の街は、一つの領地ではなく、王都をも凌駕する経済と技術の都として君臨していた。


「公爵に伝えろ。私が捨てられたあの日、この地の開拓は不可能だと言ったな。だが、見ての通りだ。私が産み出した理に従う者だけが、この至高の日常を享受できる。王都に残された者たちには、永遠に届かない夢を見せてやろう」


アレンの言葉に、貴族たちは一様に平伏した。 わくわくするような爽快な勝利の瞬間が、街の至る所で喜びの声となって響き渡る。 武器屋や防具屋には、王都から届いた粗悪な装備が山のように積み上げられていたが、それらはアレンの創造魔法によって瞬時に分解され、より高次元の装備へと再構築されていく。


夕暮れ時、領主邸に戻ったアレンは、料理人が腕を振るった特別な晩餐に席を置いた。 テーブルには、地竜のヒレ肉を使ったペッパーステーキや、月の雫で蒸し上げた幻の魚、さらには世界樹の若芽を添えた温野菜が並んでいる。 デザートには、メイドが用意した冷たい天国鳥の卵プリンと、蜜漬けのりんごが供され、アレンの心を満たしていく。


「アレン様、雑貨屋での鑑定報告によれば、王都の宝物庫に眠っていた国宝級の魔導具までもが、修復を求めて我が街に持ち込まれているようです」


執事の報告を聞きながら、アレンは窓から見える魔法灯の海を眺めた。 嫉妬と策略で自分を追放した場所は、今やアレンがいなければ存続すら危うい廃墟へと変わりつつある。 対して、この白亜の街は、至高の創造主であるアレンの手によって、これからも無限の進化を続けていくだろう。


アレンは静かに紅茶を飲み干すと、明日の労働依頼と指名依頼の配分を考え、穏やかな眠りについた。 辺境から始まった物語は、今や世界の中心を塗り替える、至高の都の伝説へと昇華したのである。

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