第17話 至高の迎撃と略奪者の末路
アレンは領主邸の執務室で、行商人マルコがもたらした最新の情報と、偵察部隊からの報告を照らし合わせていた。 執事が静かに淹れた紅茶からは、高純度の魔力を安定させるための至高の香りが立ち上っている。 窓の外、庭師が完璧に手入れをした庭園の先には、活気に満ちた白亜の街が広がっていたが、その平穏を脅かそうとする影が確実に近づいていた。
「アレン様、公爵家が雇った略奪部隊、通称『黒い牙』が、魔物の森を迂回して西の街道付近に潜伏したようです。彼らは傭兵崩れの荒くれ者で、目的は街の略奪というよりも、商業ギルドが管理する特許情報の強奪と、雑貨屋のポーション製法の奪還にあると思われます」
執事が淡々と告げると、アレンは紅茶を一口啜り、冷徹な笑みを浮かべた。 公爵家は経済封鎖が効かないと悟るや、ついに武力による強奪という、貴族として最も卑劣な手段を選んだ。 だが、その選択こそが、彼らの破滅を決定づける最後の一押しになる。
「略奪部隊か。我が街の日常を土足で汚そうとする者には、相応の絶望を与えなければならないな。騎士団詰所と衛兵詰所に通達しろ。演習は終わりだ。実戦形式の『労働依頼』として、略奪者たちの掃除を開始する」
アレンは立ち上がり、自らも前線を確認するために領主邸を出た。 街の広場では、屋台からシチューやから揚げの香ばしい匂いが漂い、冒険者たちがステーキやパイを頬張りながら談笑していた。 彼らのこの何気ない幸福こそが、アレンが創造魔法で守り抜くと決めた至高の理である。
アレンはまず冒険者ギルドを訪れ、緊急の指名依頼を発令した。 内容は、略奪部隊の退路を断つための捜索依頼と、不審な動きをする密偵の救出依頼を装った捕縛である。 訓練所では、新人訓練を終えたばかりの若者たちが、ベテランの冒険者と共に装備の最終確認を行っていた。
「領主様! 武器屋で修理してもらったこの剣、切れ味が以前の三倍ですよ。略奪者どもなんて、一発で真っ二つにしてやります」
一人の冒険者が、アレンが監修した至高の業物を掲げて叫んだ。 防具屋で買取・強化されたオリハルコン製の防具を身に纏った彼らの士気は、空を突くほどに高い。 アレンは彼らに頷き、次に騎士団詰所へと向かった。
騎士団員たちは、行商人たちが密かに運んできた王都の内部情報をもとに、略奪部隊が潜む座標を完全に特定していた。 アレンは騎士団長に対し、今回のみ特別に、創造魔法で定義した自動追尾機能を持つ魔法矢の使用を許可した。 これは雑貨屋で鑑定された高品質な魔石を動力源とする、この街独自の至高の兵器だ。
「さあ、わくわくするような掃除の時間だ。策略を巡らせた公爵に、力の差というものを教育してやろう」
アレンが街の境界線に到達した頃、略奪部隊『黒い牙』は、白亜の城壁の隙を突こうと森から這い出してきた。 彼らは王都の腐敗した権力争いの中で、金で魂を売った男たちだ。 しかし、彼らが街の敷地に一歩足を踏み入れた瞬間、アレンが定義した防衛結界が発動した。
「構築、至高の重圧。定義、不法侵入者の魔力凍結」
アレンが軽く指を弾くと、略奪者たちの足元から重力場が発生し、彼らの身体を地面に叩きつけた。 自慢の武器は、アレンが商業ギルドで特許管理している高度な魔力中和技術によって、ただの鉄屑と化した。 略奪者たちは、自分たちが戦っている相手が人間ではなく、世界の理そのものを操る創造主であることを、その身をもって知ることになった。
騎士団と冒険者たちが一斉に突撃し、戦闘はわずか数刻で終結した。 捕らえられた略奪者たちは、衛兵詰所の地下牢へと連行され、そこで公爵家との繋がりを全て吐かされることになる。 その間も、街の露店では変わらず蒸し料理やりんごが売られ、宿屋では朝食を楽しんだ旅人たちが穏やかな一日を始めていた。
「アレン様、略奪部隊が所持していた王都の隠密命令書を回収いたしました。これで、公爵家を正式に王国議会で糾弾する材料が揃いました」
騎士団長の報告に、アレンは満足げに頷いた。 今回のざまぁ展開は、単なる撃退に留まらない。 公爵家が自ら禁じ手を使ったという事実は、行商人たちの情報網を通じて、瞬く間に近隣の領主たちや王都の平民に広められるだろう。
夕刻、アレンは領主邸に戻り、料理人が腕を振るった骨付き肉のステーキを楽しみながら、紅茶を啜った。 デザートには、メイドが用意した冷たいパイが供され、アレンの心を癒やしていく。 日常の平穏は守られ、敵は自滅の道を歩み始めた。
「さて、次は王都そのものを買い取る準備でも始めようか。商業ギルドに物流管理のさらなる強化を命じておかなければな」
アレンは静かに微笑み、窓から見える魔法灯の輝きを眺めた。 至高の辺境開拓は、今や誰も止めることのできない神域の拡大へと加速していた。 わくわくするような爽快な勝利の余韻に浸りながら、アレンは穏やかな眠りについた。
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