第15話 寝返る貴族たちと至高の美食

アレンは領主邸のバルコニーから、朝霧に包まれた白亜の街を眺めていた。 執事が淹れた淹れたての紅茶の香りが、清々しい朝の空気に混ざり合う。 庭師が丹念に整えた庭園には、魔力を帯びて輝く草花が咲き乱れ、メイドたちがテラスのテーブルに朝食を並べていた。


「アレン様、王都公爵家による経済封鎖は、皮肉にも周辺領主たちの離反を加速させているようです。今朝も、隣接する子爵家と男爵家から、公式な会談を求める使者が到着いたしました。彼らは公爵の横暴に耐えかね、我が街の物流管理網への参加を熱望しております」


執事が静かに告げると、アレンは満足げに頷いた。 公爵家はアレンを孤立させるつもりだったのだろうが、実際には自らの求心力を失う結果となっている。 アレンは、商業ギルドが管理する特許や権利を背景に、自分に忠誠を誓う者だけに営業権や物流の便宜を図るという選別を行っていた。


午前中、アレンは街の視察へと向かった。 街には行商人たちの荷馬車が次々と到着しており、彼らは道中で仕入れた最新の流行や王都の不穏な情勢をアレンに報告していた 。 行商人の一人が、王都の貴族たちの間で、アレンの街で産み出された至高の魔導具を所有することが一種のステータスになっていると教えてくれた。


アレンはまず、商業ギルドに立ち寄り、寝返ってきた貴族たちの領地との間で、競争制限を設けた新しい交易協定の草案を作成させた。 融資や資金援助の条件として、彼らの領地で採掘される素材の独占買取権を要求する。 これにより、アレンの街の武器屋や防具屋には、さらに希少な素材が安定して供給されることになる。


昼時、アレンは活気に満ちた露店通りを歩いた。 最新の前提条件に基づき、街の食文化はさらなる進化を遂げている。 屋台や露店からは、じっくり煮込まれたシチューや、香ばしく焼き上げられたステーキの香りが漂っていた 。


「領主様、見ていってください。今日は骨付き肉を特製のタレで蒸し料理にしてみました。から揚げも揚げたてですよ」


露店商が威勢よく声をかける。 アレンは彼らの活気ある姿を見て、日常の豊かさが人々をどれほど強く結びつけるかを実感した。 冒険者たちは、屋台で買った熱々のパイやりんごを頬張りながら、午後からの討伐依頼やダンジョン探索依頼に向けて英気を養っていた 。


次に訪れた酒場では、肉持ち込みで調理を依頼した大物猟師たちが、ミードや蒸留酒を片手に盛り上がっていた。 アレンはカウンターに座り、主人が出したチーズとピクルスを摘みながら、行商人たちが語る王都の凋落ぶりに耳を傾けた。 公爵家では、アレンという魔力調整役を失ったことで、宝物庫に眠る伝説級の魔導具さえもが次々と破損し、修理できる者がおらず放置されているという。


「あちらの武器屋や防具屋は、今や鉄屑を叩いているようなものですよ。アレン様の許可がない特許管理の壁は、王都の最高級職人でさえ突破できないんですから」


行商人が愉快そうに笑うと、周囲の冒険者たちからも笑い声が上がった。 わくわくするような爽快な逆転劇は、すでに始まっている。 アレンは次に、教会の診療所へと向かった。


そこには、公爵の圧政から逃れてきた多くの民がいたが、診療所には雑貨屋から届けられた高品質な回復ポーションが備蓄されており、混乱は微塵もなかった 。 アレンは診療所の司祭に対し、新しく移住してきた人々には無償で栄養価の高いスープとパンを配るよう労働依頼を出した。 この慈悲深い日常の風景こそが、公爵家の横暴さをより際立たせる鏡となる。


午後、アレンは騎士団詰所と衛兵詰所の合同演習を視察した。 最新のオリハルコン装備に身を包んだ騎士たちは、アレンの創造魔法によって身体強化の定義を付与され、一騎当千の力を得ていた。 偵察部隊からは、公爵家が焦りのあまり、禁じ手である盗賊や略奪部隊を雇ってこの街を襲撃させようとしているという情報がもたらされた。


「策略や権力争いに明け暮れ、ついには略奪に手を染めるか。公爵家も落ちるところまで落ちたな」


アレンは冷徹に告げると、冒険者ギルドに対し、街の周辺の捜索依頼と、不審な部隊の救出依頼を兼ねた大規模な指名依頼を発注した。 同時に、雑貨屋の店主に命じ、密偵を炙り出すための特殊な鑑定機能を持つ魔導具を門に設置させた。


夕刻、領主邸に戻ったアレンは、料理人が用意した至高の晩餐を楽しんだ。 テーブルには、領地で採れたばかりの新鮮な野菜を使った蒸し料理や、肉汁溢れるステーキが並んでいる 。 食後には、メイドが用意した冷たいたりんごのデザートが供された。


「アレン様、宿屋の夜食も大好評のようです。移住者たちは、これまで経験したことのない贅沢な日常に涙を流して感謝しております」


執事の報告に、アレンは静かに微笑んだ。 嫉妬や策略で自分を追い出した者たちが、今や自分が産み出した理に縋らなければ生きていけない状況にある。 これ以上のざまぁ展開はないだろう。


アレンは明日の予定表を確認し、寝返ってきた貴族たちとの会談でどのような条件を突きつけるか、その緻密な策を練りながら穏やかな眠りについた。 至高の辺境開拓は、今や王国全体の秩序を塗り替える革命へと変貌していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る