第13話 行商人の情報網と至高の対抗策

白亜の街の朝は、多くの行商人たちが操る荷馬車の車輪の音から始まる。 アレンは領主邸の執務室で、商業ギルドから回ってきた最新の物流管理報告書を精査していた。 執事が静かに淹れた紅茶の香りが部屋に満ちる中、一人の行商人がギルドの推薦を受けてアレンとの面会を許された。


「アレン様、王都から参りました行商人のマルコでございます。道中の街道で気になる噂を耳にいたしました。王都の公爵閣下が、周辺の領主たちに働きかけ、この街への物流を制限する経済封鎖を目論んでいるようです」


マルコが緊張した面持ちで報告すると、アレンは書類から目を離さずに小さく頷いた。 行商人は単なる商品の運び手ではない。 彼らは各地の流行や権力争いの火種、そして貴族たちの密かな策略を運んでくる貴重な情報源であることを、アレンは深く理解していた。 最新の前提条件に従い、アレンは行商人との対話を重視し、彼らがもたらす情報の価値を高く評価している。


「経済封鎖か。私から全てを奪い、死の荒野へ追いやった者たちが、今度は私が築き上げた豊かさまで奪おうというわけか。公爵らしい、浅はかで執拗なやり方だ」


アレンは立ち上がり、大きな窓から活気に満ちた街を見下ろした。 商業ギルドの広場では、特許管理された最新の魔導具が取引され、営業権を持つ商人たちが誇らしげに商談を進めている。 王都側がどれほど圧力をかけようとも、この街にはアレンが創造魔法で産み出した、他では決して手に入らない至高の資源がある。


「マルコ、貴重な情報を感謝する。商業ギルドを通じて、君の商会には特別に希少素材の優先営業権を与えよう。さらに、道中の安全を確保するため、冒険者ギルドに最高ランクの護衛依頼を指名依頼として発注しておく」


アレンの言葉に、マルコは驚愕と歓喜で顔を震わせた。 アレンの街の営業権は、今や王都の金貨を積んでも手に入らないほどの価値がある。 アレンは執事に命じ、すぐに商業ギルドと連携して、王都側の動きに対するカウンターとしての戦略を実行に移した。


午後、アレンは街の各施設を巡り、防衛と生産の体制を確認した。 武器屋と防具屋では、捕らえた密偵たちが持っていた王都の粗悪な魔導具を解析し、その弱点を突くための修理定義が職人たちに共有されていた。 雑貨屋では、王都ではもはや製造不可能となった高品質な回復ポーションが、行商人たちの手を通じて戦略的に各地へ輸出される準備が進んでいた。


「王都が物流を止めるというなら、こちらは情報の物流で対抗する。行商人たちに、この街がいかに安全で、王都がいかに腐敗しているかを広めさせろ。情報の格差こそが、最大の武器になる」


アレンは冒険者ギルドを訪れ、情報収集依頼と捜索依頼の報酬を銀貨二枚分上乗せした。 これにより、王都側の動きはさらに詳細に、かつ迅速にアレンの元へ届くようになる。 訓練所では、新人訓練を終えたばかりの若者たちが、衛兵詰所や騎士団詰所の精鋭たちと共に、街の境界線の警備を強化していた。


一方で、酒場では今日もポトフや串焼きを囲む笑い声が絶えない。 アレンは酒場の主人に、行商人たちが休息中に情報を交換しやすいよう、専用の談話スペースを拡張するための資金援助を申し出た。 宿屋でも、夜食の席で行商人たちが最新の流行について語り合い、それがまた新しい商品の権利管理へと繋がっていく。


アレンは次に、教会の診療所を訪れた。 そこでは、王都の教会を見限って移住してきた司祭たちが、アレンの創造した聖なる光の定義に涙を流していた。 アレンはこの診療所の評判を意図的に広めるよう、行商人たちに指示を出した。 病に苦しむ王都の貴族たちが、プライドを捨ててこの街に縋り付いてくる未来を見越してのことだ。


「嫉妬や策略で街の発展を止められると思っているなら、大きな間違いだ。私の創造魔法は、物理的な壁だけでなく、人々の意識の理さえも塗り替える」


夕暮れ時、領主邸に戻ったアレンを、メイドたちが温かい出迎えと共に晩餐の席へと案内した。 料理人が腕を振るった至高の皿を楽しみながら、アレンは頭の中で次の段階の設計図を完成させた。 王都の公爵家が経済封鎖を実行した瞬間に、彼らの領地が内部から崩壊するように、緻密な罠を仕掛けていたのである。


行商人の荷馬車が、アレンの意志を乗せて再び夜の街道へと繰り出していく。 それは、追放された少年による、王国全土を巻き込んだ至高の逆転劇の第二幕であった。 わくわくするような知略の攻防が、この白亜の街の静かな夜の裏側で、着実に進行していた。


アレンは静かに紅茶を飲み干すと、明日の指名依頼のリストに最後の手を加え、穏やかな眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る