第6話 至高の武装と不穏な影
白亜の街は、未知の鉱石オリハルコンの発見に沸き立っていた。 アレンは領主邸の工房で、自ら創造魔法を振るい、鉱石の精錬と加工の工程を定義していた。 彼の指先が虹色の原石に触れると、魔力の奔流が走り、不純物が一瞬にして排除されていく。
「これで、武器屋と防具屋に卸す地金の準備は整ったな」
アレンは、完璧な純度となったオリハルコンのインゴットを執事に預けた。 執事は、アレンが定義した通りの物流管理に基づき、それを街の商業ギルドへと運んでいく 。 商業ギルドでは、この伝説級の素材に対する商品の権利管理や特許管理が厳格に行われ、特定の職人以外には扱わせないよう競争制限が敷かれていた 。
アレンは、自ら街の様子を視察するために領主邸を出た。 街の目抜き通りには、冒険者たちが溢れている。 彼らは冒険者ギルドで採取依頼や討伐依頼を受け、手に入れた報酬を手に、武器屋や防具屋へと列を作っていた 。
「おい、見たか。あの防具屋に並んでいる剣、あれは王都の近衛騎士団が使っているものより質が良いぞ」
一人の冒険者が、防具屋の窓越しに展示された装備品を見て感嘆の声を上げた。 武器屋と防具屋では、アレンが提供した素材を用いた装備品の販売や修理が行われており、その性能はすでに周辺諸国にまで噂が広がっている 。 アレンは、満足げに頷きながら酒場の前を通りかかった。
酒場からは、昼間から陽気な笑い声と、食欲をそそる香りが漂っている 。 持ち込まれた魔物の肉がポトフや串焼きに姿を変え、エールやミードと共に冒険者たちの胃袋を満たしているのだ 。 日常の平和がそこにはあった。
しかし、アレンが騎士団詰所へと足を向けた時、空気の色が変わった。 騎士団長が、険しい表情でアレンを出迎えた。
「アレン様、衛兵詰所からの報告です。領地の境界線付近で、王都のものと思われる偵察兵の姿が確認されました。それも一人や二人ではありません」
アレンは目を細め、森の向こう側を凝視した。 公爵家が、視察団の報告を受けて実力行使に出ようとしているのは明白だった。 彼らは、アレンが築き上げたこの至高の資産を、武力によって奪い取ろうと考えているのだろう。
「やはり、連中は自分の過ちを認めるよりも、奪う道を選んだか。救いようがないな」
アレンの声には、怒りよりも深い呆れが混じっていた。 彼は即座に、冒険者ギルドを通じて周辺の索敵捜索依頼を発令し、情報収集依頼のランクを上げた 。 さらに、騎士団と衛兵に対して、オリハルコンを配合した最新鋭の装備を配備するよう指示を出した。
「商業ギルドには、非常時の資金援助の準備を。雑貨屋には、最高品質の回復ポーションの在庫をすべて教会に運ばせろ」
アレンの指示は、迷いなく正確だった。 街の各施設が、まるで一つの生き物のように連動し始める 。 露店で食べ物を売っていた商人たちも、異変を感じ取って荷馬車を安全な場所へと移動させ始めた 。
その日の夕刻、街の城門の前に、王都の紋章を掲げた重装騎兵団が姿を現した。 その先頭に立つのは、かつてアレンを家から追い出した、異母弟の姿だった。
「兄上、大人しくこの街を譲り渡してもらおうか。無能な貴様には、この至高の領地を維持する資格などないのだ」
弟の傲慢な叫びが、夕闇に響き渡る。 アレンは城壁の上に立ち、冷ややかな視線で弟を見下ろした。 日常が、わくわくするような爽快な逆転劇へと切り替わる瞬間だった 。
「資格、か。お前たちが一度捨てたものを、今更欲しがるとは見苦しいな。……教えてやろう。本物の創造魔法が、軍隊を相手に何を産み出すのかを」
アレンが右手を掲げると、街全体を包む巨大な魔法陣が起動した。 これこそが、アレンが日常の裏側で準備していた、領地全土を対象とした空間定義魔法であった。
不毛の地を捨てた者たちへの、至高のざまぁ展開が幕を開ける。
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