森のソロキャンプと運命のもふもふ 9

 現代日本人としての危機感が一瞬頭をよぎる!

 でも、不思議と体はそれを受け入れた。


 そういえば、神様が言ってた。お詫びだから、もちろん健康で頑丈な体にすると。病気や感染症の心配もない、と。……言ってたっけ? いや、多分言ってたはず。うん、言ってたに違いない!


 そう自分に言い聞かせている間に、ぺろぺろぺろぺろ!


 顔中を舐められる。


「わ、ちょ、くすぐったい!」


『ありがとう! ありがとう! 恩人! 大好き!』


 尻尾をブンブン振りながら、全身で喜びを表現している。


 可愛い。

 めちゃくちゃ可愛い。


 ◇


 白い子が落ち着いたところで、改めてじっくり観察する。


 本当に真っ白。

 雪みたいに白い。


 毛並みは、ふわっふわでもふもふ。

 触り心地最高。


 顔立ちは、狼というより、やっぱり犬に近いかな。

 でも、普通の犬より、ちょっと鼻が長い気がする。


 瞳は透き通るような青色。

 サファイアみたい。


「君、お名前は?」


『名前? ない』


「家族は? お母さんとかは?」


『お母さん、いなくなった。ずっと前』


 しゅんとする白い子。

 耳がペタンと下がって、尻尾も垂れる。


「一人ぼっちなの?」


『うん。ずっと一人。寂しい』


 ぎゅっと胸が締め付けられる。


 こんな小さい子が、一人で森で生きているなんて。


 罠にかかったのも、きっと食べ物を探していて不注意だったんだろう。


「じゃあ、私と一緒に来る?」


『え?』


「私も一人なんだ。だから、一緒に暮らそう」


『本当? 本当に一緒にいていい?』


 瞳がキラキラ輝いている。

 期待と不安が入り混じった表情。


「もちろん。私たち、今日から家族だよ」


『家族! 僕、家族できた!』


 また飛びついてきて、顔を舐められる。


 もう、この子は私が守る。

 絶対に守る。


「名前、つけていい?」


『名前! 僕に名前くれるの?』


「うん。そうだなぁ……」


 白くて、丸っこくて、ころころしてて……。


「コロ、っていうのはどう?」


『コロ?』


「うん、コロ。可愛いでしょ?」


『コロ! 僕の名前、コロ!』


 ぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。


 名前を気に入ってくれたみたい。


『コロ! コロ! 僕、コロ!』


 何度も自分の名前を繰り返している。


 よっぽど嬉しいんだな。


「コロ、よろしくね」


『うん! よろしく! えーっと……』


「私はコトリ。ヤマネ・コトリ」


『コトリ! コトリとコロ! 一緒!』


 この子、本当に可愛い。

 もふもふだし、人懐っこいし、素直だし。

 最高のパートナーを見つけた。


 でも、やっぱりコロの正体は気になる。犬なのか、狼なのか。あるいは、全く違う生き物なのか。


「ちょっとだけごめんね、コロ」


 私は【異世界インターネット接続】の検索ウィンドウを開く。スマホのカメラ機能のように、コロの姿をウィンドウに映し出す機能があった。

 画像検索だ。


 検索窓にキーワードを入力する。


『白い 毛がふわふわ 銀色の耳 子供』


 検索ボタンをタップする。


『検索結果:該当する種族データはありません』


 あれ? ヒットしない。じゃあ、キーワードを変えてみよう。


『白い狼 子供』

『銀色の狐 子供』


 何度か試してみるが、結果は同じ。


『……データベースを拡張し、神話・伝説上の生物カテゴリーを検索しますか?』


 そんな項目があるんだ。


『はい』を選択する。


『再検索結果:特徴の一部が一致する可能性のある種族を検出しました』


 画面に表示されたのは、たった一つの名前。


『神獣フェンリル(幼体)』


 ……フェンリル?

 たしか、北欧神話に出てくる、神々をも喰らうとんでもない魔狼の名前だったっけ。


『特徴:純白の毛皮を持つが、成長と共に変化する場合がある。耳や尻尾の先に銀色の毛が混じる個体も存在する。極めて高い知性と、絶大な魔力を秘める。通常、人間に懐くことはない』


 ……いやいや、まさかね。


 こんなに人懐っこくて可愛い子が、あの凶暴なフェンリルのはずがない。

 きっと、たまたま特徴が似ているだけの、別の生き物だろう。うん、そうに違いない。

 そっと検索ウィンドウを閉じる。


 ま、可愛いからなんでもいっか!

 深く考えるのはやめにした。

 どんな種族だろうと、この子が私の大切な家族となったことに変わりはない。

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