右腕のデバイスが、臨界点を超えた。

リミッター解除。末梢組織の熱変性。

視界が白濁する。

焦げる匂いがした。自分の皮膚が焼ける匂い。


だが、その激痛と引き換えに、ハルは一〇〇パーセントの解像度で彼を受け取った。


重い。

あの日の隕石が、そのまま右腕に受肉したような、逃げ場のない質量だった。

ハルの肩に回された腕は、骨が軋むほどの重力を伴っていた。


肋骨の浮き出た胴体。壊れた時計のように不規則な心拍。

それは再会の抱擁ではない。

自分の命という資源をすべて「重さ」に変換し、ハルの右腕へと流し込む葬列だった。


痛ければ痛いほど、彼は実在する。腕が焼ければ焼けるほど、彼は私の一部になる。


最後の一閃。

デバイスの基板が爆ぜ、通信回線が溶融した。

瞬間、レンの、肺を絞り出すような最後の吐息が、ハルの首筋を熱く撫でた。

宇宙の全帯域を使い果たした、彼からの最期のギフトだった。


静寂。

ハルは膝をついた。

右腕は、だらりと力なく垂れ下がっている。

感覚はない。熱も、冷たさも、痛みすら、もう二度とこの腕が感じることはない。

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