四
右腕のデバイスが、臨界点を超えた。
リミッター解除。末梢組織の熱変性。
視界が白濁する。
焦げる匂いがした。自分の皮膚が焼ける匂い。
だが、その激痛と引き換えに、ハルは一〇〇パーセントの解像度で彼を受け取った。
重い。
あの日の隕石が、そのまま右腕に受肉したような、逃げ場のない質量だった。
ハルの肩に回された腕は、骨が軋むほどの重力を伴っていた。
肋骨の浮き出た胴体。壊れた時計のように不規則な心拍。
それは再会の抱擁ではない。
自分の命という資源をすべて「重さ」に変換し、ハルの右腕へと流し込む葬列だった。
痛ければ痛いほど、彼は実在する。腕が焼ければ焼けるほど、彼は私の一部になる。
最後の一閃。
デバイスの基板が爆ぜ、通信回線が溶融した。
瞬間、レンの、肺を絞り出すような最後の吐息が、ハルの首筋を熱く撫でた。
宇宙の全帯域を使い果たした、彼からの最期のギフトだった。
静寂。
ハルは膝をついた。
右腕は、だらりと力なく垂れ下がっている。
感覚はない。熱も、冷たさも、痛みすら、もう二度とこの腕が感じることはない。
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