第5話 吸収→急成長
翌日から僕の日常はガラリと変わった。
これまでは1日に1件から2件の草刈り依頼をこなすことで日銭を稼いでいたのだが、その空き時間を使って1人で魔物の討伐依頼を受けるようになったのだ。
対象は主にゴブリン。他にもGランクやFランクの魔物を狩ることもあるが、その絶対数からゴブリンと対峙する機会が非常に多かった。
もちろん最初は1人で魔物討伐に向かうことに若干の恐怖心はあった。
しかし何度か依頼をこなす内にそういった感情もいつの間にか消え去っていた。
魔物を大量に討伐して慣れたのもあるが、やはりローブの認識阻害により、存在を認識されないという事実が非常に大きい。
ゴブリン達魔物の前に姿を表しても、一切気付かれることはなく、襲われる心配がない。
その安心感が僕から魔物に対する恐怖という感情を取っ払ったのだ。
ただしこの状況が健全とは言えないし、この安心感はローブあってのものだ。
故に今後ローブの認識阻害なしで魔物と戦う練習はした方が良いだろう。
……まぁ、それは追々ということで。
ちなみにあの日から今日までプラネさんとは行動を共にしていない。
最初から頼りきりではよくないと判断し、1人で魔物討伐をしていた中で、彼女が急遽依頼でこの町を離れてしまったのである。
どうやらかなり遠方での依頼のようで、移動も合わせて2週間近くかかるそうだ。
その際伝言で、絶対に無理はしないようにと念を押された。もちろん無理をするつもりはない。
強くなりたいし、そのための努力はするけど、だからといって危ない橋を渡るつもりはない。……それで死んだり障害を負ってしまっては元も子もないからね。
さて、そんな僕だが現在はしっかりとフードを被りながら森の中を歩いている。
目的はこれまでと変わらずゴブリンの討伐である。
……正直ゴブリンばかりを相手にするのはメリハリもないし、飽きもある。
ただ低ランクの内は誰もが通る道のようなので、だからといって投げ出すつもりはないが。
ちなみにこの森は奥地に進む程段々と空気中の魔素量が増し、強い魔物が現れる仕組みになっており、現在僕がいる辺りはちょうどFランクの魔物が生息するエリアである。
ただしイレギュラーも存在し、この辺りに強力な魔物が発生する可能性もある。
とはいえその可能性は限りなくゼロに近く、故にこの辺りが初心者の狩場としては最適な場所と言える。
「……お」
そんな感じで思考しながら森の中を散策していると、およそ30m程先に何らかの生物の姿を発見する。
……あれは、ゴブリンか。数は……3匹と。皆武器を持っているようだけど……うん、これなら問題ないな。
この広い森の中で特定の魔物を見つけるのは中々難しい。
今回は絶対数の多いゴブリンが目的であるためまだ簡単な方だが、それでもこうして特定の魔物かつ自身の力量で討伐できるちょうど良い数の群れに遭遇できるのは非常に運が良いと言える。
「さて……やるか」
言葉の後、僕は右手の鎌のをぎゅっと握ると、特に忍びもせずにゴブリンへと近づき──彼らの側に姿を現す。
しかしやはりこちらに気づいた様子はなく、ゴブリンは落ち着いた様子で何やら「グギャグギャ」と声を上げながら歩いている。
……うーん。相変わらずの隠密力。
ここまで反応がないと、よくないと分かっていながらもどうしても気が抜けてしまう。
「…………」
僕はゆっくりと歩くと、ゴブリン達の目の前に立ち、煽るようにベーッと舌を出す。
しかし当然反応はない。
続いて、より煽り力の高いであろう変顔を向けてみる。
やはり反応はない。
「…………狩るか」
僕はどこか虚しさを覚えながらそう呟くと、目の前にいるゴブリンの首を刎ねた。
……1つ。
このまま様子を見ることもできるが、他の2匹が警戒を強めたり、武器を振り回して暴れ出したりでもしたら面倒なため、彼らが反応するよりも早く、その流れのままに他の2匹の首も飛ばした。
……2つ、3つと。
「…………ふぅ」
何とも呆気ない終わりに、彼らの亡骸を前に小さく息を吐いた後「食べていいよ」と声を上げる。
すると右手の鎌から黒いモヤが飛び出すと、目の前のゴブリンを纏めて飲み込んだ。
実はあの後判明したことなのだが、どういう訳かこのモヤは僕の言葉に従うのである。とは言っても、自在に操れる訳ではなく、ただ待てができるというだけだが。
果たして鎌に意思があるのか、何故待てができるのかはよくわかっていないが、何にせよこれで他人に魔物を吸収している瞬間を見られる可能性が下がるため非常に都合が良い。
「……お、きたきた」
モヤがゴブリンを吸収し終わるのと同時に、身体が熱くなる。
ゴブリン相手では微々たるものだが、これで身体能力や魔素量が向上したはずだ。
……これを繰り返せば、普通の冒険者ではあり得ないスピードで強くなれる。
正直ローブの認識阻害と鎌による身体能力の強化の組み合わせが強力すぎて、何だかズルをしているような気になる。
とは言え、今更手放すつもりは毛頭ない。
「この力を使って、爆速で強くなってやる」
僕は拳を握ると、確かな手ごたえに微笑みを浮かべながらうんと頷いた。
悪喰のシキ〜草刈りで生計を立てていた転生少年、相棒の『草刈り鎌』が進化するチート武器だと判明したので無双する〜 福寿草真【コミカライズ連載中/書籍発売中 @fukujyu7575
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