第10話 一九七七年 青山青葉バレエ学校 発表会

 発表会直前のある日、稽古場で純華じゅんか青葉あおば美鈴みすずたちたくさんのバレエ教師たちが集まって話をしていた。


 すみれが『なんだろう』と思いながら近づいて行くと、純華から驚く話が伝えられた。


 突然、純華が海外に行くことになったという話だった。


 すみれは心の整理がつかなかった。

 何が起こったのか理解することに時間がかかった。

 純華は家の事情でスイスに行くという。

 そんなことがあるのかと理解できなかったが、事態が変わることはなかった。


 気持ちがまとまらないまま、すみれが一人でストレッチをしていると純華がやって来て、すみれに優しく話し掛けてきた。

「あなたと一緒にお稽古できて楽しかったわ。これからは青葉先生や美鈴さんたちからたくさん学ぶといいわ。また、日本に帰ってきたら、必ずここに来るから」


 すみれは返す言葉が見つからなかった。


「これあげる」

 それは純華が舞台の時いつも使っているメイク道具を入れるすみれ色のポーチだった。


「このポーチ、すみれ色だから、あなたにいいでしょう」


「ありがとうございます」

 すみれは涙を拭いながらポーチを受け取った。


「今度の発表会『グラン・パ・クラシック』は、あなたでいくそうだから」

「そんな」


「踊れるわよ。ずっと頑張ってきたじゃない『グラン・パ・クラシック』は、私からあなたへのプレゼントよ」


 純華は優しくすみれを抱きしめてくれた。


「ありがとうございます」


一九七七年 青山青葉あおやまあおばバレエ学校発表会


 すみれは美しい衣装を着て、純華からもらったすみれ色のポーチを見つめ……静かに目を閉じた。


 純華と練習した日々が甦る。


 すみれは『グラン・パ・クラシック』を見事に踊った。


 劇場は拍手喝采に包まれた。


 Fin

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エトワールたち1974 伝説が生まれるとき snowkk @kkworld1983

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