第5話 衝撃 深山純華
何曲か続いた後、いよいよ、美紀や由香、この客席のあちこちから聞こえてきた
場内アナウンスが流れた。
「『ドン・キホーテ』よりキューピッドのヴァリエーション
そして、舞台中央の立ち位置につく。
白いジョーゼットの衣装に金色の美しい髪。
それはまさにキューピッドそのものだった。
すみれは深山純華というバレリーナが舞台に出てきた瞬間、あまりの可憐さ、美しさ、可愛らしさに雷に打たれたような衝撃を覚えた。
聞けば、これは主役の踊りではないらしい。
しかし、深山純華というダンサーが出てきた瞬間の衝撃。
主役の踊りかどうか、どころの話ではない。
こんなダンサーが出てきたら、今まで踊ってきたダンサーたちの印象は全て吹っ飛んでしまう。
「何、この人」
ここまでじっと舞台を見ていた優一も思わず言葉を漏らす。
登場しただけで拍手と歓声が渦巻いた。
あまりの拍手に、一時、舞台の流れが止まった。拍手と歓声で曲がかき消されてしまう。
観客席が静まるのを待って曲が流れ始めた。
踊り始めると、すみれはその美しさに一瞬で心をつかまれた思いがした。
美しい。
とにかく、一つ一つの動き、止まったときのポーズが美しい。
バレエのポジションはわからないが動きの軌跡が美しくクリアだ。
すべての所作が美しい動線を通る。
踊りの安定感が凄い。
純華一人が群を抜いている。
これはキューピッドだ。
すみれはバレエ『ドン・キホーテ』など知らない。当然、その中に出てくるキューピッドがどういう設定なのか、どういう役なのかも、まったく知らない。
しかし、そんな、すみれにも、彼女の踊りがどれだけレベルの高いものなのかというのは一目で分かった。
純華が踊り終わりポーズをとると、すみれは無意識に涙を流しながら拍手を送り続けていた。
純華がお辞儀をすると観客席から大きな拍手と喝采が起こった。
お辞儀をする姿も、まるでプロのバレリーナだ。
言葉では表現しにくいが貫録を感じる。そして舞台から去っていく姿も美しい。
すみれは今まで経験したことがない感動に包まれた。
すべてのプログラムが終わった。
ロビーに出ると一部の観客たちが劇場の出口ではない方に流れていく。
すみれがそちらに目を向けると、優一が、
「この人たち舞台の方に行ってるみたいだよ。行ってみようよ」
と言った。
すみれたちも流れについて行ってみると、
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