青春失恋計画の会議は放課後のカフェで(後半)
「まずは第一目標は詩にゃんと友達になること。それが成立しないと、親密な関係は築けないと思う。何か案はあるかな奏君」
俺にペンを向け聞いてくる美少女様。
「そうだな、率直に恋人になってくださいって言うのはどうだ?」
「流石、奏君は言うことが違うね。それは友達になる常套句だもんね。私もよく言われたよ」
「だろー」
俺は少し呆れたような乾いた返事を返した。皮肉を込めて言ったんだが、美少女属性には本気で友達になるための常套句だったらしいのか、椿は首を振りながら頷いてる。
「私は友達だったとしても嫌なんだけど、詩にゃんはどうなのかしら?」
椿には、友達になるためのドア・イン・ザ・フェイスが通用しないらしい。
椿の次に可愛いと思う詩にゃんにそれが通じるかどうかは、分からない。『ひとりぼっち撲滅運動』なる慈善活動をしてる彼女に、それを言えば、確実に友達になれる。
「まぁ、友達にはなれる。けど、代償とし振られるな」
「そうなるよね。そんな薄っぺらい失恋は、至高の失恋リストである私でも選択肢に入れたくないわね」
恋人関係になるための布石に、振られるのはリスクでしかない。妥協の友達。相手の拒絶の選択肢として選ばれた友達だから、それ以上の関係になるとハードルが上がる。
当然のように、椿もそれを理解してるのだろう。
「じゃあ、相手から友達になりたいって思わせるしかないわね」
「それは同意だ」
「まずは、同じ時間の共有からかしら? 接する時間を増やして、奏を好きだと誤認させる……私も奏を好きになるための資料が手に入るかも!」
嘘から出たまこと、たとえ始まりが嘘だとしても、それを本物にすればいい、か。
「悪くないな。ちょうど、今週の土曜日、クラスの集まりに誘われてんだよ! 詩にゃんから、そこで実行してみるか?」
意表を突かれた様子で、椿は俺を見る。
合わせ鏡のように俺も眺める。
本当に整った顔立ちしてるな。世の中の汚いものを見たあと、彼女のご尊顔を見れば、すべてが浄化されるに違いない。
「一本取られたわ。流石ね、奏君。私の協力なしで青春の一ページを飾ろうとするなんて、成長したわね、私の知ってる奏君じゃないみたいで、悲しくなってくるかしら」
すげぇ分かりやすく芝居めいた言い方で、「シクシク」と呟きながら、その様を演じる美少女様。
下手くそな演技なのに見て、俺は自然と笑みを浮かべていた。
「さて、奏君を好きになる戦略的行動戦術はそろそろ控えて、本題を詰めましょうか」
危ない危ない。そのひと言なかったら完全に騙されてたぞ。
椿は俺の顔をみて、してやりました、と笑みを浮かべていた。
椿は開いていたノートに何かを書き込み始める。
「奏君を翻弄しました、とか記録してるんじゃないだろうな」
「それもあるけど『詩にゃん攻略&私の失恋計画書』に計画内容をまとめてるのよ」
「余計なひと言は要らなくない?」
「これは私と奏君の初めて共同作業の記録よ。忘れたら勿体ないでしょ!」
「じゃあ、君の痛いセリフも記しておきなよ。土と水だけじゃない恋の種は実らない、返しの言葉を」
椿は目をぱちぱちとさせる。
「そんなこと言ったかしら?」
「忘れたなら俺が覚えてる範囲で書いてあげるよ」
椿はすねるようにほほ膨らませる。
「奏君の、いじわる……でもこれは私のノートなのよ。手、動権は私にある」
「そらそうだ、俺も忘れないうちに記録しとくわ」
「わかった! 余計なこと書かないから、信じられないなら横に来て、一緒に書きましょう」
ぽんぽんと、椿は空いた隣の席を叩く。
一瞬、美少女である椿の隣座る想像してしまい、俺それ以上考えないよう自分を律した。
「そうだな」
俺はそう淡々と答え、隣の席へ座った。
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