第4話 校則と懲戒処分の境界

――「守らせたい」ではなく、「どこまで処分できるか」


## 1 事件の類型(何が問題になるのか)


校則や懲戒が問題になる事件には、共通の構図がある。


* 学校に校則が存在する

* 生徒がそれに違反した

* 学校が指導・懲戒処分を行った

* 生徒(または保護者)が「行き過ぎだ」と争う


ここで争われるのは、


> **校則はどこまで生徒を縛れるのか**

> **懲戒はどこまで許されるのか**


という点である。


多くの人は感情で考える。


* 規則を守らない方が悪い

* 教育のためだから仕方ない


しかし、裁判所が見るのは、そこではない。




## 2 校則の法的な位置づけ


まず重要なのは、次の前提である。


* 校則は「法律」ではない

* しかし、完全に自由に決めてよいものでもない


学校は、教育目的のために

**生徒の行動を一定程度制限する権限**を持つ。


ただし、その制限には条件がある。




## 3 裁判所が使う基本フレーム


校則や懲戒の適法性について、

裁判所は一貫して、次の観点から判断する。


### ① 校則の目的が正当か


* 教育目的に関連しているか

* 単なる好みや管理のためではないか


教育と無関係な制約は、正当化されにくい。




### ② 内容が合理的か


* 必要以上に厳しくないか

* 他の手段で代替できないか


ここでは、

**「そのルールでなければならない理由」**が問われる。




### ③ 懲戒処分が相当か


* 違反の程度に比して重すぎないか

* 処分の目的が教育にあるか


重要なのは、


> **校則違反=即、重い処分が許されるわけではない**


という点である。




## 4 代表的な判断の方向性


校則・懲戒をめぐる裁判例を整理すると、

次のような線が見えてくる。


### (1)校則そのものは有効とされやすい


* 集団生活の維持

* 教育環境の確保


これらは、正当な目的とされることが多い。




### (2)しかし、処分が問題になりやすい


* 形式的に校則違反だから

* 見せしめ的に重くした


こうした処分は、

**裁量の逸脱・濫用**として違法とされやすい。




### (3)体罰・過度な指導は明確にアウト


* 身体的苦痛を与える

* 精神的に過度な圧迫を加える


これは、教育目的では正当化されない。




## 5 裁判所が引いている「線」


裁判所は、次のような線を引いている。


### 許される範囲


* 教育目的に結びつく校則

* 違反の程度に見合った指導・処分


### 許されない範囲


* 教育と無関係な統制

* 違反内容と釣り合わない重い処分

* 生徒の人格を否定するような指導


ここでのポイントは、


> **問題は「校則があるか」ではなく、

> 「どう使われたか」**


という点である。




## 6 尊属殺・正当防衛・表現の自由との共通構造


これまでのテーマと、校則・懲戒には共通点がある。


* 尊属殺

 → 身分で一律に重くできない

* 正当防衛

 → 感情で正当化できない

* 表現の自由

 → 不快感で違法にできない

* 校則・懲戒

 → 規則があるだけでは足りない


すべてに共通するのは、


> **目的・必要性・相当性の対応関係**


で線が引かれている点である。




## 7 この線が持つ現実的な意味


この判断枠組みは、次の場面でそのまま使われる。


* 髪型・服装指導

* スマホ持ち込み禁止

* 停学・退学処分


重要なのは、


> 校則を守らせたいか、ではない。

> **その処分が教育として成り立っているか。**


という視点である。


---


## まとめ(試験・理解用)


* 校則は無制限に生徒を縛れるわけではない

* 校則の目的・内容・運用がチェックされる

* 問題になりやすいのは、校則よりも懲戒処分

* 判断基準は、教育目的と処分の相当性

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