第四話

 週末、俺と久保と桜田の三人は、かねてから計画していた旅行にきていた。

 森岡の親が関東でも有数の避暑地にペンションを保有していて、サークルメンバーに解放してくれているのだ。

 スマホを見ると森岡から連絡が入っていた。鍵は郵便受けに入ってるから自由に使ってくれとのことだ。俺はすかさず「有り難くつかわせてもらいます」と送ると、すぐに「あんまり騒いで汚すなよ」とあった。


 ペンションの中は驚くほど広く、三人で使うには勿体ないほどだった。少し古いけど、小洒落たログハウス風の作りに、庭ではバーベキューができるほどの広さがある。室内は個室が四つほどあり、三人で泊まるには十分すぎる広さだ。

「にしてもさサク、今日は飲み過ぎないでくれよ」

 先日のこともあって久保がチクリと釘を刺すと、桜田は少しバツの悪そうな表情で「今日は気をつけるから」と言いながらぐびりとチューハイを飲んだ。

 酔いも回ってきた頃、桜田がふと黒田の名前を出した。

「そういえば結局黒田さんに連絡取れないままなの?」

「まあな」と短く答える。俺は、あの日美咲さんに言われたことが引っかかっていた。

「連絡してみようぜ、ほら、ただ忙しかっただけかもしれないだろ」

 桜田が呑気に言った。「お前なあ」と久保が呆れたように言う。少し迷ったが、結局俺は黒田に電話してみることにした。

 スマホを取り出し、通話ボタンを押す。少しの間があって呼び出し音が鳴ると。

「あれ!?」

 桜田が素っ頓狂な声を上げた。「なんだよサク」と視線を向けると桜田が家の中を見渡している。そこで俺も気がついた。天井からズズズ、という振動音が聞こえる。

「鳴ってる……よな?」

 そうだ。スマホの振動音だ。

「えっ……? なんでだよ」

 突然振動音が止んだ。それと同時に、手元のスマホから「留守番電話サービスにお繋ぎします」という音声が流れる。

「な、なあ。黒田さんの携帯、この家のどっかにあるんじゃねえか」

「ま、まじかよ。でもなんで」

「探してみよう」と言うなり久保が立ち上がった。

 急いで二階に駆け上がったところで、桜田が「もう一回電話かけてみて」と言った。俺は無言で頷くと、再度電話をかける。


ブー。ブー。ブー。


「おい、どこだ? こっちか?」

 音のする部屋に入り、電気をつける。宿泊用の部屋は、六畳ほどの広さで簡易なテーブルとベッドが備え付けられていた。

「この辺から聞こえない?」と桜田に合図を送ると、桜田がベッドの下に手を伸ばし、ごそごそと探る。「あった」と言った桜田の手にはスマホが握られていた。

 ちょっと貸してとスマホを受け取り、パスコードを入力する。黒田の誕生日は知っていたし、黒田はこういうところにこだわりがない。案の定ロックは簡単に解除された。

「やるじゃん」と久保が感心する。しかし、ロックが解除できたところで勝手にメッセージだのを見るのもはばかられる。どうしようかと考えていると桜田が画面を覗き込んだ。

「おい、黒田さんってスマートウォッチつけてたよな」

「おお、よく覚えてるな」

 それが? と聞くと、桜田は自慢げな顔で指を鳴らした。

「紛失したときに、どこにあるか調べられる機能があるっしょ。ええと、ああこのアプリだ」

 アプリを立ち上げると、位置情報が表示された。

「あれ、意外と近いな。これって、裏の山を登ったところじゃない?」

「はあ?」と久保が首を傾げる。

「なんだってそんなところにいるんだよ」

 黒田は連絡もなくサークルを辞めた、と思っていた。それが、森岡の親のペンションに、スマホが放置されているなんて。何かがあったと考えるほうが自然だ。

「行って、みるか……」

ごくりと唾を飲み込む。

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