第15話 狩る者と狩られる者



 夜明けの光が、

ビル群の隙間に

差し込み始めた。


 だが、

都市の裏側は

まだ眠らない。


 荒神龍斗は、

地上へ降り、

人気のない

高架下を

進んでいた。


 宝槍は、

布で包み、

背に負う。


 それでも、

気配は

隠しきれない。


     ◆


 足音。


 一つではない。


 前。

左右。

背後。


 包囲。


「……やっぱり、

来たか」


 龍斗は、

歩みを止め、

息を整えた。


     ◆


 闇から

姿を現したのは、

黒装束の

探索者風の男たち。


 だが、

装備が

揃いすぎている。


 統制された

視線。


 無駄のない

立ち位置。


「ギルド非公認、

ってところか」


 男の一人が、

低く

笑った。


「標的が

自分から

出てくるとはな」


     ◆


 合図。


 同時に、

三方向から

魔力弾。


 龍斗は、

地を蹴り、

横へ

跳ぶ。


 爆音。


 コンクリートが

砕け、

粉塵が

舞う。


 だが、

止まらない。


     ◆


 近接。


 短剣使いが

踏み込む。


 龍斗は、

布を

引き剥がし、

宝槍を

構えた。


 穂先が

鈍く

鳴る。


 短剣を

受け流し、

柄で

手首を

叩く。


 骨の

軋む音。


     ◆


 背後から、

大剣。


 振り下ろし。


 龍斗は、

前転し、

足元へ。


 槍を

低く

払う。


 膝。


 崩れる。


 そのまま

喉元へ

穂先。


 止めない。


 昏倒。


     ◆


「……二人、

落ちたぞ!」


 焦り。


 だが、

連携は

崩れない。


 残りが

距離を取り、

魔法陣を

展開。


「包囲魔法だ!」


     ◆


 光の壁が

円を描き、

龍斗を

閉じ込める。


 内側の

空気が

重くなる。


 圧縮。


「……詰める気、

か」


 胸の奥で、

竜が

動く。


 だが、

龍斗は

抑えた。


     ◆


 壁が

迫る。


 時間が

ない。


 龍斗は、

宝槍を

強く

握り締めた。


「……少しだけ、

借りるぞ」


 竜の鼓動が

応えた。


     ◆


 踏み込み。


 全力の

突き。


 穂先から

蒼光が

溢れる。


 魔法壁に

亀裂。


 もう一度。


 叩き割る。


 破砕。


 光が

霧散する。


     ◆


「なっ――」


 驚愕。


 その隙を

逃さない。


 龍斗は、

一気に

距離を詰める。


 魔術師。


 詠唱途中。


 柄で

顎を

打ち上げ、

昏倒。


     ◆


 残り二人。


 槍使いと、

拳闘士。


 同時に

突進。


 龍斗は、

正面から

迎えた。


 槍と槍が

激突。


 衝撃。


 だが、

重心が

違う。


 龍斗は、

一歩

踏み込み、

柄を

滑らせる。


 至近距離。


 拳闘士の

一撃が

迫る。


     ◆


 龍斗は、

受けず、

流し、

肘。


 鳩尾。


 息が

止まる。


 続けて、

槍使いの

足を

払う。


 倒れた瞬間、

穂先を

喉元へ。


     ◆


「……負けだ」


 男が

歯を

食いしばる。


 龍斗は、

槍を

引いた。


「誰の

差し金だ」


 沈黙。


 だが、

視線が

語る。


 恐怖ではない。


 忠誠。


     ◆


「……組織、

か」


 竜が

低く

唸る。


 敵は、

一つではない。


 そして、

個人でもない。


     ◆


 遠くで、

サイレン。


 誰かが

通報したのだろう。


 龍斗は、

その場を

離れた。


 追っては

こない。


 今日は、

ここまで。


     ◆


 高架下を

抜け、

朝の街へ。


 人々は、

何も

知らずに

歩いている。


 この日常を

守るために、

戦っていると

思えば、

悪くない。


     ◆


 だが――

狩る者は、

常に

狩られる側にも

なる。


 宝槍が、

微かに

震えた。


 次は、

もっと

激しい。


 荒神龍斗は、

そう

確信していた。


 竜神と人。


 二つの存在を

抱えたまま、

戦いは

さらに

深みへと

進んでいく。

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