第7話 再潜行命令
集合時間は、
朝六時。
第三管理区画前の
簡易待機所には、
すでに数名の探索者が
集まっていた。
荒神龍斗は、
その端に立ち、
黙って装備を確認する。
短剣。
予備一本。
簡易防具。
昨日と、
ほとんど変わらない。
違うのは――
周囲の視線だった。
「……あの子だ」
「映像に映ってた
少年だろ」
ひそひそとした声。
龍斗は、
聞こえないふりをして、
前を見つめた。
◆
「全員、
揃ったな」
低い声が、
場を引き締める。
声の主は、
ギルド所属の
正規探索者。
ランクは、
A。
背中の大剣が、
ただ者ではないことを
物語っている。
「今回の任務は、
再潜行調査だ」
「昨日発生した
異常出現の原因を、
特定する」
探索者たちが、
息を呑む。
「荒神龍斗」
名を呼ばれ、
龍斗は顔を上げる。
「君は、
同行対象だ」
空気が、
一瞬で変わった。
「……なぜ」
「君が、
異常の中心にいる」
Aランク探索者は、
迷いなく言った。
◆
ダンジョン内部。
昨日よりも、
空気が重い。
通路の壁には、
新しい爪痕。
「魔物の密度が、
上がってる」
後方の探索者が
呟く。
その時。
天井から、
何かが
落ちてきた。
「上だ!」
次の瞬間、
鋭い影が
降り注ぐ。
――スラッシュバット。
刃のような翼を持つ
飛行魔物。
五体。
「散開!」
Aランクの指示。
だが、
一体が
龍斗を狙った。
急降下。
龍斗は、
即座に前転。
翼が、
地面を
切り裂く。
反動。
その瞬間を、
逃さない。
短剣を投げる。
翼の付け根。
魔物が、
空中で
バランスを崩す。
落下。
龍斗は、
追い打ちに
跳んだ。
首元へ
一閃。
血が、
霧となる。
◆
「次、
来るぞ!」
別方向から、
さらに三体。
探索者が
魔法を放つ。
――雷撃。
(電流を
魔物に流す
中級魔法)
だが、
一体が
耐え切った。
龍斗は、
地面を蹴り、
壁を踏み、
跳躍。
空中で
体をひねり、
短剣を
突き出す。
目。
貫通。
魔物が、
絶叫し、
落ちる。
着地。
足が、
痺れる。
だが、
止まらない。
「……速すぎる」
探索者の
誰かが呟く。
龍斗自身、
考えていなかった。
体が、
勝手に
最適解を
選ぶ。
◆
通路の奥。
床が、
不自然に
盛り上がっていた。
「止まれ!」
Aランクが
叫ぶ。
遅かった。
床が、
弾ける。
現れたのは――
地中型魔物、
アースモール。
体長三メートル。
硬質な皮膚。
「前衛、
押さえろ!」
剣と盾が
激突する。
だが、
押し負ける。
「……通らない」
龍斗の視界が、
狭まる。
胸の奥が、
熱を持つ。
――壊せ。
あの感覚。
龍斗は、
一歩踏み出した。
「荒神、
無茶を――」
止める声を、
背に受けながら、
懐へ。
アースモールが
顎を開く。
龍斗は、
牙の間を
滑り込み、
内部へ
短剣を突き立てた。
柔らかい。
血。
悲鳴。
魔物が、
暴れる。
龍斗は、
刃を引き抜き、
反対側へ
跳び出す。
次の瞬間、
魔法が
直撃。
アースモールは、
崩れ落ちた。
◆
静寂。
荒い息。
探索者たちが、
龍斗を見る。
Aランク探索者が、
ゆっくりと
近づいた。
「……少年」
「君は、
自覚しているか」
「自分が、
普通じゃない
ということを」
龍斗は、
答えなかった。
答えられなかった。
自分でも、
わからない。
ただ、
戦うたびに、
胸の奥が
近づいてくる。
何かが、
目を覚まそうと
している。
ダンジョンの奥で、
低い振動が
続いていた。
――ドクン。
――ドクン。
竜神の鼓動。
再潜行命令は、
まだ終わらない。
むしろ――
ここからが
本番だった。
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