第3話 映画館
今日はメグミと2人で映画館で映画を見る日だ。
「カップルチケット1組、よろしくお願いします」
「か、かっぷる」
「いひひ」
まあ、カップルだよな。対外的に見たら。
市内のシネコンで、ポテトとアイスコーヒーを片手に、涼しい館内は過ごしやすい。
夏はまっさかり、今も大勢のお客さんで混んでいる。
今日見る映画はアニメ映画だ。
それも同じレーベルの先輩作家が原作者をしている、とびっきりのやつ。
ラブコメで原作、コミカライズが人気になりテレビアニメ化、そして今回の映画化となった。
「ラブコメだね」
「だな」
「ラブラブしちゃうね」
「あ、僕たちのことか?」
「さあ、どうでしょう?」
今日はぐいぐい体もくっつけてきて、スキンシップが激しい。
最近ちょっと忙しくて、カラオケにも付き合っていなかったので、寂しかったのかもしれない。
僕は少し反省して、メグミのほうに注目する。
Tシャツにミニのフリルスカートだ。生足がまぶしい。
シャツからはブラが透けていて、ピンク色なのが分かる。
あのメグミがこんな格好をするようになったんだな、と思うと感慨深いものがある。
胸もだいぶ大きくなってきて、僕は目のやり場に困るくらいになってきた。
よく周囲の視線を感じる。
薄暗い映画館の座席に並んで座る。
「ん」
「なに?」
「手」
「手、ああ、手ね」
メグミは映画では手を繋ぎたがる。
元々は怖いホラー映画を見たときに、堪らずに僕の手を握ってきたことが始まりだったのだけど、いつしか映画では手をずっと繋いで痛いと思うようになったらしい。
手に加わる力加減や、小さく左右に振ったりして、興奮具合や緊張感とか、ダイレクトに伝わってくる。
こういうのも、ラブコメを書くのに参考になるな、と頭の中にメモ書きして、作家の僕であろうと煩悩を追い出して、精神を統一する。
それでも、隣の席からいい匂いが漂ってくると、さすがに僕の心はドキドキが止まらない。
途中、共有のポテトに伸ばす手が、ふてれしまって、ビクっとなる。
映画のクライマックス、主人公とヒロインがピンチを乗り切り、夕日をバックにいい雰囲気の中、キスをする。
メグミの手に力が入ってくる。
そっとメグミのほうを見ると、こちらをちらっと見てきて、すぐに前を向きなおす。
一瞬でも、キスしたいとか思ったのが、バレたかもしれない。
でも向こうもこっちをチラ見していたから、考えていることは同じかもと思うと、なんだかおかしい。
映画が終わり、ロビーでぎゅっと抱き着いてくる。
「んんん、映画、よかったよ」
「そりゃよかった」
「ちょっとトイレ」
そういう感想だけ呟いて、トイレに去っていく。
どちらかというと、抱き着いた恥ずかしさから、逃げていくみたいだ。
VTuberといっても、普段は一人の女の子に過ぎない。色々、たまっていることもあるだろう。
「原作者、山田先生って書いてあったね」
山田先生は大先輩のレーベルの作者だ。
「お、おう」
「サトシ君も、将来、アニメ化されて映画化とかもされちゃうかも」
「あはは、そうかもね」
「そうしたらさ、私、主題歌歌いますね」
「おう」
「それからそれから、ヒロインの声優もやりたいです」
僕はコーヒーの残りをずずっと吸う。
「いいね、歌と声は近い職業かも知れないもんな」
「うん、先輩のVtuberで声優で出演した子とかいますよ」
「へぇ、そうこうこともあるんだ」
「すごいでしょ。私もやりたいです。それでね、原作者とヒロインの声優が電撃毛結婚するんですよ」
「お、おう、そりゃまたって僕かよ」
「そうだよ! そうしたら結婚しようね!」
「あ、ああ。道は長いな」
僕はタジタジである。
付き合っているかも不明なのに、結婚である。
それも、アニメ化、映画化してやっと結婚できるのか。
その道は険しく厳しいであろう。
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歌姫の彼女と小説家の僕 滝川 海老郎 @syuribox
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