3枚目 異世界でもアルバイト!

小鳥のさえずり、木々の揺らぎ、暖かな日差し。

ヒサミは目を覚まし、窓を覗くと…


そこは野菜と小麦の畑が広がり、馬が馬車を引いて行き交う光景。

ファンタジックな光景に、寝ぼけた頭が冴えていく。


「ホントに、異世界に来ちゃったんだなぁ…」


ベッドから出て部屋から出て、階段を降りる。

するとポーラが気づく。


「あ!ヒサミさんおはよう!よく眠れた?」

「ポーラおはよう。ポーラのおかげでぐっすりだよ」


それを聞くとポーラは安心する。


「よかったぁ。ヒサミさん疲れてたみたいだから… あ!パンが焼き立てだけど、食べる?」

「おっ!いいのか!?食べる食べる!」


昨日と同じ丸パンと、湯気の立ち上るスープに、牛乳が出てくる。

「ありがたいなー… いただきます!」


干し肉と玉ねぎのスープがじんわりと身に染みる。

焼き立ての丸パンは、質こそ昨日と変わらずだが、焼き立てでなお美味しい。

スープに漬けるとじんわりと吸ってまた違う美味しさが生まれる。

牛乳も搾りたてフレッシュだ。きっと近くに牧場があるのだろう。


「あぁ~… ありがたい~…」

「えへへ、ヒサミさんよく喜んでくれるから作りがいあるなぁ」

「ポーラのパンが美味いからだよ」

「えへへへへ~~~」


ヒサミが喜ぶ姿を見て喜んだ後、ポーラは再び宿の仕事に戻っていく。


そのまま忙しそうな宿屋の様子を眺める。

お母さん、お父さん、ポーラで宿を切り盛りしている様子。


「ポーラちゃん!丸パン2つと角パンちょうだい!」

「はい!銅貨5枚です!いつもありがとう!」

「ポーラちゃんのパンが一番美味いからねぇ!」


宿泊客のみならず、村の人達にもパンを売っている… いわゆるパン屋兼業のようだ。

売っているのは、いつもの丸パン。

フランスパンのような形の長パン。

食パンのような形の角パン。

人気もあり、慌ただしそうだ。


ちなみに銀貨は銅貨10枚分だそうな。


とはいえ、今動いても迷惑だろう。

ヒサミはそのまま観察していた。


しばらくして宿屋の動きが落ち着き、みんな一息ついた様子。

ヒサミは改めて、ポーラのお父さん… 主人に話しかけた。


「ご主人さん、改めて昨日は泊めてくれてありがとうございました。」

「あぁ、一日くらい気にすんなって!」


「それで折言ってお願いがあるんですけど…」

「あ?なんだ?」


一息付き、ヒサミは面接の姿勢を整える。


「オレ、以前は飲食業で、裏方も接客でも働いていました。しかし、事故に巻き込まれて、一文無しなんです。 先立つものもないので… 見ず知らずのよそ者で恐縮ですが、よければここで働かせてください!」


その頼みを聞き、主人は顎に手を添え考える。

ヒサミの手を見て、姿勢を見る。

「悪いやつじゃなさそうだがなー… 飲食業ってのも嘘じゃねえみたいだし…」


「でも人手が足りない~っていつも言ってたじゃないか」

ポーラのお母さん、女将さんが相談に加わる。

色々考えて… 主人は聞く。


「ウチはキツイぞ?」

「はい!喜んで!バリバリ働きます!!」


勢いのある即答に、主人はガハハと笑う。

「んじゃ!決まりだな! 改めて、俺はポラリス・フラワハンドってんだ。よろしくな。」

「妻のポリーヌよ。堅苦しいのは抜きでいいからね。」

「はい!丸山 久味、ヒサミです!よろしくお願いします!」


こうして、ヒサミのアルバイト雇用が決まった。

ピザ屋店員の制服から、村にそぐう格好に変えて、

最後にピザ屋の帽子だけ被って、いざ労働に挑む。


「じゃあまずは皿洗いだ! これ全部洗えよ!」

「はい!」

シンクに山盛りになった調理器具。

それに怯まず文句も言わず、速攻で取り掛かるヒサミ。


現代社会の洗剤みたいに軽く落ちたりはしないけど、

それでも迅速かつ隅々まで綺麗になるように擦り落とす。


「終わりました!」

「早えな!? … 洗い残しもねえようだな。文句無しだ!」


「次は清掃だ!キッチン、受付、食堂、チェックアウトしたお客様の部屋、綺麗にしろよ!」

「はい!」


細部にこそ神は宿るとは日本の教え。

ハタキやモップを駆使して、土汚れや埃を落としていく。

乱れたシーツは四隅揃えてピシッと直す。


「これでどうでしょうか!?」

「また早えな!? バッチリ綺麗じゃねえか、文句無し!」


「次は勘定だ。 ウチは、宿泊は朝食付きで銅貨8枚。パンは、丸パン銅貨1枚、長パン銅貨2枚、角パン銅貨3枚だ。」

「なるほど。」

「つーわけで、丸パン5個、長パン3個、角パン2個だといくらになる?」

「銅貨17枚!あるいは銀貨1枚と銅貨7枚!」

「早いな!? 正解だよ!!」


他にも一通りの仕事を、持ち前のバイト経験で的確にこなすヒサミ。

それに主人ポラリスはすっかり感心していた。


「教えることねえじゃねえか! こりゃとんでもねえ即戦力だな!」

「はい!バリバリ任せてくださいよ!」

「こりゃ頼もしいぜ! ガハハ! おいポーラ、いい奴連れてきたなぁ!」


ヒサミの働きぶりに、ポーラもすっかり喜んでいる模様。

「ヒサミさん凄いね〜! 一緒に働けて嬉しいよ!」

「オレも役に立てて嬉しいよ。改めてよろしく!ポーラ!」

「うん!よろしくね!」


ヒサミの異世界アルバイトは、順風満帆なスタートを切ったのだった。

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