第5話。


「これで、登録は完了です」


 ギルド職員が書類をまとめながら言った。


「最後に、パーティ名を登録します。名義はどうされますか?」


 そう来たか、と一瞬考える。


「うーん……」


 正直、僕はこういうのが得意じゃない。

 ヴィントという名前だって、昔、友人に決めてもらったものだ。

 分かりやすい方がいい、という理由だけで。


「君は、何か案ある?」


 軽い気持ちでそう振ると、彼女は目を丸くした。


「え、えっと……」


 一瞬戸惑ってから、言葉を選ぶように続ける。


「ヴィントさんと、私のパーティなので……それが分かる形が、いいかなって……」


 なるほど。

 変に気負っているわけでも、投げやりでもない。


 ……正直、こういう場面で自分が決めると、無骨になるのは目に見えている。


 彼女の目が、ほんの少しだけ輝いているのに気づいて、思った。

 ここで変な名前を出して、残念に思われたくはないな、と。


「……折角だし、決めて欲しい」


 そう言って、肩をすくめる。


「僕が決めると、どうしても無骨になってしまう」


 彼女は一瞬驚いたようにして、それから、少しだけ考え込んだ。


「……いいんですか?」


「うん」


 職員がペンを持ったまま、こちらを見る。


「で、パーティ名は?」


 彼女は一度、息を吸ってから、少し緊張した声で言った。


「──永遠の糸、です」


 一瞬、静かになる。


「……どうして、それに?」


 理由を聞いたのは、深い意味はなかった。

 ただ、気になっただけだ。


 彼女は慌てたように首を振る。


「い、いえ……この先もずっと、語り継がれたいなって……!

 あ、無理なら全然……!」


 なるほど。


「いい名前だ」


 即座にそう答える。


「それぐらいの気持ちで、頑張ろうか」


 彼女は、ほっとしたように息を吐いた。


「では、登録いたします」


 職員が紙に書き込む。


「パーティ名、《永遠の糸》。登録完了です」


 少し間を置いて、続けられた。


「ヴィント様の在籍されるパーティですが、パーティとしては初級帯からの扱いになります。

 また、べヴァさん個人も初級帯からです」


 彼女が小さくうなずく。


「では、ご活躍を期待しております」


 そうして、すべての手続きは終わった。




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