第2話……。


 隣にいる彼と旅ができている。


 それだけで、胸の奥がいっぱいになる。

 今にも飛びつきそうで、危ない。


 ――だめ。

 今は、だめ。


 歩幅を合わせる。

 少し後ろ。少しだけ距離を取って。


 彼の歩き方を見る。

 ああ、やっぱり。ゲームの時から、その癖は変わらない。


 無駄がなくて、真っ直ぐで。

 ……可愛い。


 最初にこの世界で彼を見た時、言葉を失った。


 街の中を歩いていて、ふと視界に入った背中。

 立ち姿も、歩き方も、癖も、全部。


 憧れていたプレイヤーが、そこにいた。


 現実感がなかった。

 夢だと思った。

 でも、どれだけ見ても消えなかった。


 だから、声を掛けられた時、頭が真っ白になった。


 心配そうに、普通に。

 困っていないか、と。


 その瞬間、考えた。


 ――同じプレイヤーだとバレたらどうしよう。

 ――メッセージを送っていたこと、覚えていたら。

 ――引かれるかもしれない。

 ――嫌われたくない。


 だから、首を振った。


 ゲームの名前を聞かれて、知らないふりをした。

 あれは嘘だったけど、あの時の私には、他に選択肢がなかった。


 家族と急に会えなくなったこと。

 帰る場所を失ったこと。

 それだけを、悟られないように伝えた。


 返事の言葉は、ここには書かない。


 でも、その時の彼は、きっと苦しかったはずだ。

 同じ境遇なはずなのに、それでも私に、優しい言葉をくれた。


 偶然だったと思う。

 街の広場で、たまたま泣いていた私に、声を掛けてくれただけ。


 それでも。


 だから私は、今、ここにいる。


 彼の通った道をなぞる。

 風の流れも、足場も、全部知っている。

 追従するのは簡単だ。ただ身体を通すだけ。


 でも、それを悟らせない。


 私は“頑張っている人”でいなければならない。

 彼の隣にいるために。


 彼の背中を見る。

 今は、追わなくていい。


 一緒に歩いているのだから。


 そう自分に言い聞かせながら、私は少しだけ視線を落とし、静かに息を整えた。




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