第3話 嘘つき
僕は嘘つきだ。
朝の光が、まとわりつく。
毎日、周りに、自分に嘘を付く。
「元気だよ」
周りはそれを信じる。
僕は、”元気で大丈夫な子”になれる。
放っておいても平気な子になれる。
みんなの好きな”大丈夫な子”を演じることは、いつの間にか得意になっていた。
「大丈夫?」
大丈夫だよ。
笑顔を見せると、相手も微笑む。
安心する。
気にしなくなる。
「無理しないでね」
無理なんてしたことないよ。
平気だよ。
そう答えるたびに、何かが胸の奥で折れる。
小さな小さな嘘。
それは、次第に僕を殺していく。
嘘の数だけ、腕に傷が増える。
忘れないように。
辛かったこと、我慢したこと、なにもかも、全部忘れないように。
傷を、証をつける。
其処に在った感情が、確かに存在したと示すために。
「大丈夫じゃなくてもいいんだよ」
もし、僕が成長物語の主人公ならこの言葉で変われるのだろう。
涙を流して、助けられて、救われて、次の章へ進めるのだろう。
でも僕は、主人公でもないし。
成長なんて、できないから。
現実は都合よく幕を引いてなんてくれない。
「大丈夫だよ。」
まだ、頑張れるから。
平気だから。
大丈夫、大丈夫だ。
言い聞かせて。
誤魔化して。
鏡の中の自分に、何度も。
自分に、ずっと嘘をつく。
同じ言葉を、枷として繰り返す。
僕は嘘つきだから。
そして今日も、その嘘を抱きしめて、眠りにつくのだ。
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